小売業界の新たな差別化要因

 デジタル化の進む小売業界において、価格を迅速かつ大規模に改定する能力が決定的な差別化要因として浮上している。特に、価格が頻繁に変動するインフレーションの期間はそうだ。

 小売企業の多くは競合他社のウェブサイトから価格情報をスクレイピング(自動収集)し、それを使って手作業もしくは自動的に自社独自の価格を設定する。よく用いられるのが、最安値の競合品よりも○○ドルもしくは○○%下げる戦略だ。しかし、このような単純な経験則を用いる企業は、商品の在庫状況や需要など諸要因に合わせた対応を取れず、大事な機会を逃してしまう。

 そのことに気づき、機械学習モデルを価格設定の意思決定に活用している企業がいま、増えている。アルゴリズムは購買、価格、商品特性に関する過去データをマイニングし、価格の変化と売上げの変化を関連づける。しかし、このような高度化にもかかわらず、それによって売上高や利益が改善するのは平均1%以下であることが研究から明らかになっている。