新時代のAIは「主体的当事者」

 車輪、蒸気機関、コンピュータ──歴史上、あらゆる技術は常に人類の道具であった。創造に使うか破壊に使うかを問わず、技術は常に人類のコントロール下にあり、決められた法則に従って予想可能な動き方をしてきたのである。

 ところが、本稿を書いている現在、この前提はほころびつつある。新世代のAI(人工知能)システムは、もはや単なる人類の道具ではない。それ自身で独立した主体的行為者として、我々の暮らしに関与する当事者になりつつある。彼らは自主的に行動し、大事な判断をみずから下し、今後の社会経済のあり方を左右する存在になりつつある。

 本稿は、ありがちな「チャットGPTの賢い使い方」といった類いの記事ではない。このAIという主体的当事者とともに暮らし、ともに仕事をすることになった新しい世界をどのように理解し、乗り切っていくべきか、というのが本稿のテーマだ。