「人を動かす」本質とは何か
アチーブメントが実践してきたのは「選択理論」(Choice Theory)に基づく経営だ。
選択理論とは、米国の精神科医であるウィリアム・グラッサーが提唱したもので、「人は外からの刺激に反応するのではなく、内側からの動機づけによって行動を選択する」という考えだ。「人間は、生存、愛と所属、力、自由、楽しみの5つの基本的欲求が満たされた状態を幸福と感じる」と主張する。
「組織は、個人の集合体です。ですから、組織中心の考え方ではなく、個人の幸せから仕組みを考えなければいけません。いかに恐れを排除し、経済的な豊かさやよい人間関係が得られる職場環境をつくるかが『人を動かす』ことの本質にあるのです」と青木氏は指摘する。

青木仁志氏
さらに、よい職場環境の中で十分に社員のパフォーマンスを引き出すには、「リードマネジメント」の実践が不可欠だと青木氏は言う。
リードマネジメントとは相反する概念に、ボスマネジメントがある。
部下を批判し、責め、ガミガミ文句を言い、罰を与え、目先のほうびで釣るようなマネジメントだ。これでは、部下は萎縮してしまい、精神的に追い詰められて、本来の能力が発揮できなくなってしまいかねない。
これに対し、リードマネジメントとは、社員の「内発的な動機づけ」が起こるようなマネジメントだ。
「部下の言葉を傾聴し、支援し、励まし、信頼し、受容して、尊重するマネジメントです。上司の正しさを部下に押し付けるのではありません。部下の望みに耳を傾け、彼らの自己実現を支援していくわけです」と青木氏は説明する。
サポートの際には、ただアドバイスや指摘をするのではなく、みずからの仕事の質を自分で振り返る「自己評価」を促すことが望ましいそうだ。
そのほうが、自分が立てた目標を自分で達成できる力が養われる。
アチーブメントが、社員にいっさいノルマを課していないのは、おのずとそうした自律型、自己管理型の人材が育っているからだ。