チーム・メンバーの貢献度を時間と金額でグラフ化する

 かつて「時は金なり」であった。だが、いまや「時は金よりも価値がある」時代である。マッキンゼー・アンド・カンパニーのリポートによれば、製品開発が6カ月遅れることで失う税引後利益が平均33%に上るのに対し、製品開発費を50%余分につぎ込んだ時に失う利益は3・5%にすぎない。新製品の成否は、その開発コストよりも開発に要する時間にかかっているのだ。多くの先進的メーカーが、そのことを認識するようになっている。

 したがって、経営者たちが新製品の開発サイクルを短くしようと必死になるのも不思議ではない。ヒューレット・パッカード(以下HP)においては、売上げの50%以上が過去3年間に導入された製品によるものであり、常時500以上の製品開発プロジェクトが進行中である。また、ボーイングのように数年の間にごく少数の新製品しか開発しない企業でも、その開発時間を短縮することに力を入れている。

 製品開発サイクルを短縮する最も効果的な方法は、クロス・ファンクショナルな製品開発チームによる共同作業であると一般には信じられている。しかしながら、実際にマーケティング担当者、開発エンジニア、製造エンジニアたちが、壁越しに仕様書を投げ合う以上の協力をするというのは、「言うは易し」なのである。

 異なった部門の人間同士が協力するのは、困難かつ不確実であり、相互理解の不足に悩まされることが多い。新製品開発チーム・メンバーは、お互いの判断や業績に対して批評を加えられる経験も資格もないことが多く、特にプロジェクト進行中にはなおさらである。他部門から来た同僚が知っていることを、自分が全部知っているわけもないし、また知ることも不可能である。そして、不確実な要素はいろいろなかたちで入り込んでくる。

 顧客は新製品にどのような特色を望んでいるか、それはどれだけの売上げになりうるか、その特色は技術的に開発可能か、新製品は望ましい価格で製造可能か──。新製品の開発に伴う困難の多くは、これらの問いに対して、異なった部門から集まった人々が答えを見つけ、合意を形成していくことに原因があるといえる。

 当然、プロジェクトのチーム・メンバーたちが他部門の仕事とすべての部門間の相互関係を理解するようになれば、製品の成功に結びつく賢明な意思決定も行われやすくなる。しかし、どうしたらお互いに理解できるようになるのだろうか。