資産の保有が弱みになる

 企業が有機的拡大や買収といった従来の方法で成長する際、必ずある条件を満たさなければならない。それは資産への投資である。企業が有機的に拡大しようとすれば、新たな資産をつくらねばならず、買収による成長に努めれば他から資産を買うことになる。いずれも資産を所有することには変わりはない。

 しかし、従来の成長戦略のリスクを高めているのは、実はこの資産の所有である。工場や機械類といった有形資産にしろ、情報やスキルといった無形資産にしろ、資産への投資は常に先払いであり、利益が出るのは将来のことである。時には相当の時間を要することもある。そのため企業成長には必ずと言ってよいほど、一時的な利益縮小が伴い、悪くすれば二度と回復することはない。

 ところが別のタイプの成長戦略を選べば、これよりずっとリスクが少なく、売上げ、利益共が即座に、そして継続的に増加する可能性がある。

 それは、他社の資産をテコにした成長戦略である。私はこれを「レバレッジ成長戦略」と呼んでいる。この戦略の前提となるのは、企業成長のために必ずしも資産を所有する必要はないという認識である。必要な資産を所有している企業があれば、自社の成長を実現するために、それを活用すればよい。そうすれば資産の所有という経済的重荷を背負うことなく、成長という経済的恩恵を享受できる。

 たとえば、あなたの企業はすでに成功を収めた家庭用高級オーブンのメーカーだとしよう。そして最近、マイクロエレクトロニクス技術のイノベーションを活用し、電子レンジ事業に参入するチャンスを得た。

 従来ならこのチャンスに乗じて、しかるべき技術力を持つエンジニアやデザインのグループを新たに雇用するか、もしくは小さな電子レンジ・メーカーを買収するところである。