「問題解決モード」に入る前に

 一筋縄ではいかない問題に直面したビジネスリーダーは、すぐさま“問題解決モード”に突入したいという強い衝動に駆られる。特別チームを招集して、解決方法を探らせようとするのだ。このやり方は、前にも起きた問題に対処する場合や、実績ある解決法が確立されている場合には問題ない。だが、これまでにないタイプの問題が起きた時や、見慣れた問題なのに中身が大きく変質していた場合、どうすればいいのか。もしくは、どこに問題があるのかよくわからない問題にはどう対処すればいいのか──。

 筆者らの行った研究やその他の研究で明らかになったことがある。リーダーやそのチームは、問題を解決しようと動き出す前に、その問題を精査・定義するのにかける時間が極端に短いのである。

 一例としてオハイオ州立大学のポール・ナットの研究を紹介しよう。彼らが中規模企業と大企業における350件の意思決定過程を調べたところ、その半分以上が望んだ結果を出せなかった。多くの場合、急がねばならないというプレッシャーに押されて、問題をあらゆる角度からじっくり調べて複雑な構造を解き明かすという努力を怠ったからだ。慌てて問題解決モードに飛び込むと、革新的で持続性のある解決策を立案する力を削いでしまうのである。