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戦略におけるプリンシプルの重要性
2021年1月8日、前代未聞の動きがデジタル界を揺るがせた。ツイッター(現在はX)が当時のCEOジャック・ドーシーの指揮の下、現職の米大統領ドナルド・トランプのアカウントを停止したのだ。暴力行為を扇動したことが利用規約の違反に当たるからだと同社は説明した。ほぼ2年後、いまのツイッター(X)のトップであるイーロン・マスクがトランプ元大統領のアカウント停止を解除した。
事情をよく知る人々にとっては、どちらの判断にも意外性はなかった。ドーシー時代のツイッターは世界的な公開討論場へと発展し、そこには“容認できる言論”について明確なガードレールが存在した。一方、2022年10月に実権を握ったマスクは、法律上明らかに必要な規制だけを残し、それ以外は無制限の言論の自由を認めるべきだと熱烈に訴えた。
一見すると2人の判断は、テクノロジー業界の大物による気まぐれのように見えるかもしれないが、実はそれぞれの描く事業戦略と複雑に結びついた「プリンシプル」(企業の原則)を反映している。ドーシーおよび後任CEOのパラグ・アグラワルは、ツイッターの主要な収益源として広告を重視していた。このため、ある種の言論に規制をかけ、企業イメージの悪化につながりかねないツイートから広告主を守ったのである。