有能なリーダーは不要なものを取り除こうとする

 1940年8月、当時の英国首相、ウィンストン・チャーチルは、ドイツ戦闘機による攻撃に備えつつも、また別の敵への対応を開始した。その敵とは「長すぎる報告書」である。234語で記した「簡潔」というタイトルの文書で、チャーチルは戦時内閣のメンバーとそのスタッフに「報告書をもっと短くするよう気をつける」ことを要請した。チャーチルは「短く明瞭な文章」を書くことを求め、「複雑な議論や統計は補遺に移し」、「お役所言葉」の使用は止めるよう促した。

 筆者らは8年間を費やして、チャーチルのようなリーダーが他者の時間の受託者としてどのように役割を果たしているのかを研究してきた。具体的には、社内の厄介なものが人々の熱意を削ぎ、健康を損ない、クリエイティビティや生産性を抑え込むのを、彼らがいかにして防ぎ、取り除いてきたかを調べてきたのである。

 筆者らはこの研究を「フリクション(摩擦)プロジェクト」と名づけた。このプロジェクトは、筆者らによる調査やケーススタディ、ワークショップ、授業などのほか、次の3つの要素で構成されている。ポッドキャストの『フリクション』におけるゲスト22人へのインタビュー、筆者らとつながりがある多様なリーダーや研究者ら、経験豊富な人々との何百回ものやり取り、他者の学術的・実践的な取り組みの分析である。