「拒絶されても、何年も原稿を突き返され続けても、答えはいつも仕事にありました。ほかにやりたいと思ったことはありません」

 2023年にピューリッツァー賞フィクション部門を受賞した小説『トラスト─絆/わが人生/追憶の記/未来─』[注1]で、エルナン・ディアズは20世紀初頭の米国の資本主義を4つの対照的な視点から描いている。その表現手法は、現代の読者の心に深く響いた。

 アルゼンチンで生まれ、スウェーデンで育ち、現在は米国で暮らすディアズは、さまざまな声を試して米国の神話を「もてあそぶ」のが楽しいと語る。

 ディアズは長年、教鞭を執り、学術書の編集者を務めてきた。44歳で出版した最初の長編小説In the Distance[注2]はピューリッツァー賞の最終選考に残った。『トラスト』は2作目になる。