企業の取締役に登用されるマーケティングの専門家はめったにいない。2019年の調査では、フォーチュン1000の何千人という取締役会メンバーのうち、マーケティング業務の経験があるのはわずか26人だった。そうした取締役は売上げの成長を促すことがこれまでの研究で示されているが、新たな研究では、彼らはイノベーションも推し進めることが明らかになった。

 研究者らは、2000~2017年の米国企業2385社の取締役会の構成と、「イノベーション・インプット」(出願された新規特許を被引用数で重み付けした)を調査した。マーケティング関連の業務に少なくとも1回就いたことのある取締役がいる企業は、イノベーション・インプットがほかの企業の2倍以上(平均266件対104件)だった。マーケターは顧客の潜在的なニーズを見極めて、それに応えるよう訓練されてきたため、この結果は驚きではないと研究者らは指摘する。

 リーダーのうち特定のタイプは、マーケティングの職務経験を持つ取締役の知見をよりうまく活用していた。CEOがリスクを取るように奨励されていたり、内情に明るかったり、取締役会の議長を兼ねていたりする企業では、マーケターが取締役になることで革新性がさらに高まった。