
早稲田大学ビジネススクール(早稲田大学大学院経営管理研究科)教授の入山章栄氏(左)と、ZIPAIR Tokyo取締役の深田康裕氏
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サマリー:2020年に就航した格安航空会社(LCC)のZIPAIR Tokyoが航空業界で存在感を高めている。従来の“常識”に囚われず、LCCでも「長距離国際線運航」「インターネット接続無料」などの価値を提供する同社の独自戦略とは。
「人の移動」が世界規模で活発化して航空業界に追い風が吹く中、経営戦略の独自性によって存在感を高めている格安航空会社(LCC)がある。2020年に就航した日本航空(JAL)傘下のZIPAIR Tokyoだ。ZIPAIRに設立時から携わる同社取締役の深田康裕氏との対談を通し、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏が、その具体的な戦略に迫る。
ZIPAIRの最終ゴールは「ニューベーシック」の確立
入山 海外赴任している妻がZIPAIR Tokyoのヘビーユーザーです。ZIPAIRはフルサービスキャリア(FSC)である日本航空(JAL)傘下のローコストキャリア(LCC〈格安航空会社〉)ですが、妻をあそこまで魅了する理由はどこにあるのでしょう。
深田 ありがとうございます(笑)。エアラインの「ニューベーシック」の確立に向け、従来のFSCやLCCがなかなか突き破れない「壁」に挑んでいるところではないでしょうか。
もっとも、基本的なビジネスモデルはほかのLCCと変わらないんですよ。
入山 航空運賃を安くするために、資産効率を徹底的に高めるというモデルですよね。機体の稼働率を上げるべく空港での駐機時間を短くしたり、機内を高密度化すべく座席数を多くして一度にたくさんの乗客を収容したりする。
深田 その通りです。ただしモデルは同じでも、それを現実化するためのアプローチの仕方に特徴があるのがZIPAIRです。「本当に必要なサービス」を厳選して磨き上げ、LCCの価格優位性を維持するとともに、ユニークな価値の提供をも目指している。
入山 FSCの枠にも、LCCの枠にも囚われない深謀遠慮がめぐらされていそうです。