ZIPAIRが提供する「LCCらしからぬ」価値とは
深田 たとえば、我々はLCCでありながら長距離国際線を運航できるのが大きな強みです。
先生がおっしゃったように、機体の稼働率を上げるため、多くのLCCは駐機時間をできるだけ短縮して便数を増やそうとします。航続距離の短い小型機の運航を前提とするとそうするしかないのですが、我々は発想を変え、中大型機を扱って成田国際空港~米ロサンゼルス国際空港などの長距離も飛ばせるようにしました。
入山 なるほど。稼働率を上げたいなら、一回の飛行時間を長くして着陸させなければいいという発想ですね。
深田 もちろん、それには高い整備力などが不可欠となりますが、そこはJALに委託することによって低コストでカバーしています。長距離運航ができるLCCは、ZIPAIRを除けば一部の海外勢に限られます。
一方、高密度化にもこだわりを持って臨んでいます。FSCと比べて遜色のない快適性を保ちながら、座席数を増やせるよう工夫しているのです。
実際、普通席のシート間隔と座席幅は、FSCの多くが採用しているのと同様の広さを確保しています。FSCのビジネスクラスに当たる座席では、フルフラットシートを導入しています。

取締役
深田康裕氏
入山 どうやって実現したのでしょう。
深田「必要だと信じられているもの」に躊躇なくメスを入れていきました。
食事やドリンクの提供は、オプショナルサービスにしました。乗客全員分の食事やドリンクを用意しなくて済むようになれば、ギャレー(厨房設備)の数を削減できる。その分、客席フロア全体のスペースを広くして、無理のない座席数増加につなげたわけです。
個人用モニターは、潔く全廃しています。座席の下に関連機器を置く必要がなくなるので足元を広くできますし、重いモニターをなくせば機体重量が軽くなり、燃費も改善します。
かといって座席の広さ以外のサービスも、「安かろう悪かろう」ではない。飲食物は持ち込み可ですし、インターネット接続が無料なのでスマートフォンといったお手持ちの端末で好きな動画や軽食の機内購入などを楽しんでいただけます。充電も全席で行える。
ネットサービスについては通信の高速化に向け、米宇宙会社スペースXの衛星通信サービスである「スターリンク」の導入も目指しているところです。