いまなぜ企業倫理が重視されるのか

編集部(以下色文字):近年、ビジネスリーダーには倫理的に振る舞うことがますます求められるようになってきました。その背景にはどのような要因があると見ていますか。

ロディン(以下略):30年ほど前、ほとんどのビジネスリーダーは、1970年代にミルトン・フリードマンによって広まった「株主資本主義」という考え方を信奉していました。よく知られるように、フリードマンは、法が許す範囲内で最大の利益を上げることが、企業の責任だと主張しました。しかし現在、このような限定的な考え方をする人はほとんどいません。ビジネスリーダーは法律を守るだけでなく、幅広い倫理的責任を担っていると考えています。環境に配慮し、基本的人権の侵害に加担せず、さまざまなソーシャルグッド(社会にプラスのインパクトを与える商品やサービス)をサポートすべきだと考えているのです。

 このようなシフトが起きた理由は、主に2つあると思います。第1に、法的に規制することが難しく、企業が関与しなくては解決できない複雑な問題が増えたこと。気候変動は重要な例でしょう。政府レベルでの統一的な枠組みづくりが難航する中、企業が温暖化ガスの排出量を減らす措置を取らなければ、地球温暖化が最悪の影響を及ぼす事態は回避できないでしょう。

 企業倫理の重要性が高まっている第2の理由は、倫理的な企業だと見なされなければ、そして、実際に倫理的な企業でなければ、長期的な持続可能性も成功もありえないと、ビジネスリーダーが理解するようになったことです。ブランド力や顧客ロイヤルティ、従業員エンゲージメント、リスク管理、そして規制当局の信頼は、どれも企業倫理と結びついているのです。

 日本でも「エシカル消費」という言葉が一般的になりましたが、こうした倫理観を伴う消費行動は、特に若い世代の間で広がっているように感じます。Z世代やミレニアル世代のような若い世代が、上の世代に比べて強い倫理観を持っているのはなぜだと思いますか。