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忍び寄る人口動態リスク
先進国のビジネス・リーダーの多くは、人口動態の大規模な変化が社会と企業に及ぼす変化を漠然と認識している。そして、このような大々的な変化に対し、自分たちは無力な存在であると決め込んでいる。その認識は一見正しく思えるが、実は誤りである。
人口統計はとても説得力がある。先進国の多くで、出生率の低下とベビー・ブーマーの高齢化を反映し、労働人口全体が着実に高齢化している。たとえばアメリカでは、55~64歳までの労働者が占める割合は、他のどの年齢層よりも急拡大している。
このような状況が、とりわけ深刻な業界もある。アメリカのエネルギー部門では、すでに労働力の3分の1以上が50歳を超えており、この年齢層は2020年までに25%以上増加すると予想されている。
日本の金融サービス部門でも、50歳超の労働者数は、2020年までに61%増加すると予想されている。実際、中国のような新興国でさえ、製造業に従事する50歳超の労働者数は、今後15年間で2倍以上に増加するとされる。
とはいえ、このような国や業界の人口統計は、もっぱら一般的な経営課題を警告しているにすぎない。重要なリスクは、個々の企業が直面している年齢構成である。社員が高齢化し、定年退職するにつれて、重要な知識やスキルが失われ、生産性の低下に直面することになる。
このような年齢構成に潜んでいるリスクは、アウトソーシングが常態化しつつある企業の容赦ないコスト削減策により、いっそう高まっている。組織は、無駄をそぎ落とそうとして、従業員の解雇を続けている。
その一方、わずか数年後には深刻な労働力不足に直面すること、またもっぱら若年労働者を解雇しているのであれば、かなり高齢の労働者しか残らなくなるであろうことに気づいていない。
日常業務の遂行すら妨げられる可能性がある。大量の定年退職が始まれば、機械の操作法や重要顧客とのリレーションシップ管理を知る人材もいなくなってしまうかもしれないのだ。