その事例として佐藤氏が挙げるのが、英国のDIY大手、B&Qの取り組みだ。同社は、自社のリアル店舗内にマーケットプレイスで販売した製品の返品カウンターを設置。購入者がセラー宛てに製品を返送しなくても、最寄りの店舗で返品できる仕組みを採用した。

「その結果、返品のために来店した顧客が、ついでに別の商品を購入するという新たな販売機会が生まれたそうです。顧客が商品を届けてくれるので、輸送の手間やコストも省けます。『物流の2024年問題』に悩む日本の企業にとっても、参考になりそうな取り組みではないでしょうか」(佐藤氏)

ビジネスモデルそのものや組織の変革を伴うケースも

 自社マーケットプレイスの活用は、小売業だけでなく、製造業でも広がっている。典型的な例が、最終製品メーカーが保守部品などのサプライヤーをセラーとして迎え入れるケースだ。

「鉄道車両製造のシーメンスや航空機製造のエアバスなどが、Miraklで構築した自社マーケットプレイスを使って、鉄道会社や航空会社向けに保守部品をオンライン販売しているのが代表例です。最近では、リファービッシュ品(メーカー再生品)の販売チャネルとして自社マーケットプレイスを活用するメーカーも増えており、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への貢献によって、ブランド力や企業価値を高める効果が得られているようです」と、佐藤氏は説明する。

 もっとも、自社マーケットプレイスを開設するには、既存の売り物や売り方を変えるだけでなく、ビジネスモデルそのものや、場合によっては組織のあり方までも大きく変革する必要がある。自社マーケットプレイスを通じて得られる顧客行動データの分析と活用も求められる。経営者みずからが意識的にかなりの熱量を持って取り組まなければ、成功は期待できないだろう。

 佐藤氏は「大きな経営判断が求められますが、労働力人口の減少も進み、経営環境の変化も激しい中、創業以来のビジネスモデルを変えてまで取り組まないと、時代のニーズに対応できなくなる可能性もあります。ぜひ、トップの意思で変革への一歩を踏み出していただきたい」と語った。

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