フォロワーシップ研究は遅れている

 フォロワーが一人もいないというリーダーは存在しない。これは自明の理である。

 にもかかわらず、現代のリーダーシップ理論はその誕生から25年もの間、一貫してリーダーだけに目を奪われ、フォロワーの存在にはほとんど目を向けてこなかった。

「優れたリーダーシップ」というテーマは、数え切れないほどの講座、ワークショップ、書籍、論文などで取り上げられている。だれもが、リーダーたちのモチベーションだけを知りたがる。ただしリーダーにも、カリスマ・リーダー、静かなリーダー、はてはひねくれ者など、さまざまあるのだが──。

 ところが、「優れたフォロワーシップ」については、ほとんど取り上げられたことがない。そもそも部下についての研究や著述が少ないうえに、たとえあったとしても、リーダーの成長という観点から部下の行動を説明しようとするか、フォロワーの個性を見落としているかのどちらかである。

 このため、何も考えずにリーダーの言うままになっているフォロワーと、仕事にひたむきに取り組むフォロワーとの違いに、まず気づかない。実際には、フォロワーの個性や持ち味は、リーダーのそれと同じくらい重要である。このことは、ビジネスの世界ではとりわけ当てはまる。

 今日では、階層の少ないネットワーク型組織が多く、そこでは主として知識労働者がチーム横断的に仕事を進めるため、だれがリーダーで、だれがフォロワーなのか、それぞれどのような手法を用いているのか、ともすれば見えにくい。指揮命令系統も目まぐるしく変わり、人事分野の新しいツールや手法も次々と考案されている。

 文化や技術などの激変を受けて、部下のニーズや行動は、とりわけ上司との関係によって大きく揺れる。だからこそリーダーは、フォロワーに関する理解をより深めるべきであり、その重要性に気づくべきだが、残念ながら後手に回ってきた。

 本稿では、リーダーとフォロワーの間に存在する力学について探ると共に、フォロワーを類型化し、各タイプの特徴を見極める手法について提案したい。リーダーやマネジャーがその役割を果たすうえで、フォロワーの類型化はきわめて心強い武器となる。