アマゾンの戦略は何を礎にしているのか

 アマゾン・ドットコムは戦略の申し子である。周知のように、創業者のジェフ・ベゾスは投資会社の計量分析チームにいた当時、ネット上での書籍販売にビジネスチャンスを見出した。

 出版業界については門外漢だった彼は、論理的な発想に基づいてビジネスモデルを築いた。商品の性格とサプライチェーンの構造から考えて、リアル店舗を構えなくとも大規模に事業展開できるはずだ、とにらんだのだ。

 アマゾンは1995年の創業以来、業務の生産性向上に努める一方、未開拓市場を見つけ出しては積極的に参入してきた。最近も、ウェブ構築者向けに事業展開するという大胆な動きを見せた。自社用に開発したツールを、他のウェブ構築者向けに提供するのだ。アマゾンの新規事業はどれもそうだが、この事業もまた、十分に理にかなっていながら、意外性に満ちている。どこか型破りなのだ。

 アマゾンの打ち手が次々と的中したことを受け、HBR編集部では、アマゾンならではの戦略プランニングの特徴を探ってみたいと考えた。どのようにアイデアを検討するのか。その実現に向けて、どのような努力を傾けるのか。ジェフ・ベゾスの持ち味こそが強みなのか、それとも組織力のなせるわざなのか。

 編集長のトーマス A. スチュアートとシニア・エディターのジュリア・カービーが、2回にわたってベゾスにインタビューを試みた。ベゾスは、トレードマークの笑顔を折々に交えながら、幅広い内容について熱っぽく語ってくれた。なお、ベゾスの妻マッケンジーは、会う人ごとに「ジェフは機嫌が悪くても、5分もすればケロっとして笑い転げるわ」と語っている。

 インタビュアーの2人は、アマゾンの戦略と企業文化は、根っからの起業家特有の楽観主義に由来しているという感想を抱いた。以下の内容は、インタビューを編集したものである。

5年、10年先でも変わらないものは何か

HBR(以下色文字):アマゾンでは、だれが戦略の方向性を決めるのですか。創業時は、引っ越しのためにニューヨークからシアトルに向かう車のなかで、あなた自身がすべてのプランを考えたのですよね。いまでもあらゆる戦略について、あなた自身が考えているのですか

ベゾス(以下略):とんでもない。当社には「シニア・チーム」、略して「Sチーム」というグループがあり、Sチームが事業の状況を踏まえながら戦略の検討に当たっています。毎週火曜日、4時間ほどの会議を開いています。そのほかにも年に一、二度は、2日間カンヅメになって、さまざまなアイデアについて検討します。その際、あらかじめ宿題が出されます。