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政府機関には、高度なパフォーマンスの長期的向上が要求される
2005年夏、ハリケーン「カトリーナ」がルイジアナ州ニューオーリンズを直撃した。死傷者数ならびに家屋倒壊など、その被害は甚大で、アメリカ連邦政府、現地の州政府と地方当局が機能不全に陥ると、惨憺たる結果が招かれることをまざまざと見せつけた。
その前年、同時多発テロ独立調査委員会、通称「9.11委員会」は、連邦政府がテロ攻撃への事前対応を誤ったとして、「21世紀の新たな課題について、何ら解決策を生み出せなかったという大失政を示す象徴的な出来事」と非難した。
勇気ある行動を取った公務員たちも少なくなかったが、あのような大惨事とその影響を考えれば、政府機関のパフォーマンスは高水準でなければならない。特に、生死のかかった緊急事態への対応と、事前のリスク軽減の2つが重要である。民間企業の生産性が急激に向上すると、社会に新たなニーズが生まれ、それに応えるソリューションが開発されるが、その際、これら2つの問題は見過ごされがちだ。
パフォーマンスに優れた政府機関と民間企業には、崇高な目標、合理的なプロセス、厳格なアカウンタビリティ(説明責任)、優秀なリーダーの存在など共通点が多い。ただし、両者の目的、文化、業務要件などは異なるため、組織としてそれぞれが直面する問題も異なる。
政府機関を変革し、そのパフォーマンスを長期的に改善するうえで重要なのは、ソリューションを発見することではない。実のところ、どのようなソリューションが必要なのか、多くの場合、はっきりしている。最大の課題は、政府機関に特有の4つの障害を克服することである。
第1に、政府機関のトップ人事は、先頭に立って改革を進めたり、大規模な変革を主導したりした人物がその功績を評価されて起用されるわけではない。むしろ、政策への支持、事務処理能力、政治力に重きが置かれる。
第2に、政府機関のトップに就任すると、改革ばかりに時間を割いてはいられない。アメリカ合衆国大統領の任期は4年だが、初めの9カ月以上は政府高官の選任だけに費やされる。任期の最終年度となれば、高官たちは次の職を探し始めている。
このように、高官たちの実質的な任期は1年半から2年と短いため、立法化しやすい政策に注力し、時間がかかり、先送りされそうな組織改革などには手を染めたがらない。