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グローバル・アカウント・マネジメントの導入に
なぜ失敗するのか
多国籍企業を顧客に抱えている企業は、「グローバル・アカウント・マネジメント」(GAM)に四苦八苦しているのではないか。この10年間で、GAM制を敷いている企業は激増している。GAMとは、プライシング、製品仕様、サービス等の基準や条件を統一し、世界各国に事業展開している顧客企業1社ごとを1つのアカウントで管理するというものである。
GAM制を敷いたサプライヤー数百社を調査したところ、その成果に満足している企業は3分の1にすぎず、うまくいっていても大変な苦労があることがわかった[注1]。調査対象は、1980年代後半から90年代半ばまでにGAM制を導入した企業である。その苦労が報われるまで、つまり価格の低下とコスト増を乗り越え、顧客企業にその事業の市場シェア拡大と売上構成の多様化という果実をもたらすまでに、平均10年という試行錯誤を要していた。
しかし、一般に信じられているのとは反対に、GAMはサプライヤーにもメリットをもたらす。我々は、GAM制を導入した主要サプライヤー165社の調査結果と、我々のコンサルティング業務、さらに各社の事例に言及した学術論文などから、一つの結論を導き出した。
GAM制を導入した企業は、数年後に顧客満足度を20%以上、売上げと利益を15%以上向上させることができる。また、導入して5年を経過すると、これらの指標が2倍以上の数値を示す[注2]。
GAMに失敗するのは、導入するタイミングと方法について具体的な方針がないまま、導入してしまうからである。たとえば、そもそもGAMが必要ない顧客──適用すべきでないと承知していながらも、適用してしまった場合もあろう──逆に適用すべきにもかかわらず、その方法を間違ったりしている。
本稿は、GAM制の導入を検討するに当たり、サプライヤーが犯しやすい過ちを未然に防ぐためのガイドラインを提供する。
GAM導入のメリットとデメリット
GAMは国内のアカウント・マネジメントをさらに発展させたものである。この仕組みを最初に採用したのはヒューレット・パッカード(HP)、IBM、ゼロックスといった大手IT企業だった。
そのきっかけは、顧客企業、特に自動車メーカー、金融サービス会社、石油会社に代表される大手多国籍企業が世界各地の拠点向けに提供されるITサービスについて、世界共通のサポートを求めたことだった。