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集中攻撃にさらされるESG
ここ数年、ESG(環境、社会、ガバナンス)にとって厳しい状況が続いている。ESGは、「企業の環境、社会、ガバナンスのパフォーマンスを測定し管理すること」を簡潔に言い表す表現である。
米国の政界の両翼から、ESGはさながらサンドバッグのように攻撃されている。左派は、主要な社会課題、特に気候変動に関して、企業が十分な取り組みをしていないと非難する。右派は、企業がESGによってリベラルな政策をいつの間にか採用することになり、したがって、市場と自由競争をゆがめていると考える。また、あらゆる分野の批評家が「グリーンウォッシング」(上辺だけの欺瞞的な環境配慮)、すなわち、企業や投資家がESGの取り組みを誇張して語ることに不満を述べている。
こうした批判の集中攻撃によって、企業幹部はESGが魅力を失ったように感じ、なかには「グリーンハッシング」に陥る幹部も出てきている。つまり、ESGの取り組みについて、公の場ではもはや話をしないのである(ハッシュは「黙る」の意)。
それでもやはり、企業の財務パフォーマンスと、環境、社会、ガバナンスのパフォーマンスを結びつける、透明性の高い方法は必要である。加えて、企業が解決の一翼を担うべき社会課題も、気候変動を含め依然として存在する。
いまこそ、ESGの棚卸しをして、企業のサステナビリティ活動の今後の道筋を描く時である。それを実現するため、筆者はこの2年間、ニューヨークやワシントンや欧州で、議論で対立する党派の間を行き来し、リベラル派や保守派、反対派や支援者と会い、共通基盤を見出そうとしてきた。
ESGをめぐる議論が落ち着くには何年もかかるだろう。政治的課題も技術的課題も、法律が絡む複雑なもので、解決までにはまだまだ遠い。代表的な例が、ESGのパフォーマンスの測定に「シングルマテリアリティ」を用いるか、あるいは「ダブルマテリアリティ」を用いるかという問題である。
シングルマテリアリティ(「財務的マテリアリティ」とも呼ばれる)は、株主価値の創造にとって重要なESGの問題、すなわち、企業にリスクを及ぼす可能性がある問題を定量化しようとする。これが、今日用いられているESGのパターンの中では中心的なものである。