太平洋戦争の各戦場で、日本軍兵士は銃剣突撃による奇襲攻撃、いわゆるバンザイ突撃を繰り返した。アメリカ軍兵士にとって、自殺行為をいとわず敵陣に突撃する日本兵の行動は不可解であり、驚愕すると同時に恐れすら感じた。日米両軍の指揮官たちは、必死に戦う彼ら兵士たちを鼓舞しつつ、刻々と変化する戦況を見極め、的確な指示を出さなければならない。泥臭い実戦を戦う最前線指揮官に問われる能力や資質は、後方にあって作戦を計画する指揮官のそれとは、明らかに異なる。
本稿で考察の対象とするのは、このような最前線指揮官たちのリーダーシップである。両軍兵士が初めて直接対戦したガダルカナル島の戦いを生き抜いた、名もなき兵士たちの言葉からは、死への恐怖心と戦闘ストレス、自己保存の欲求が極限に達するなかで、指揮官と部下それぞれが義務と責任を果たそうと葛藤する姿や、日米のリーダー像の違い、極限状態において求められるリーダーシップが浮かび上がる。