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サービス業では
変数は「品質の敵」ではなく「価値創造の源泉」
もしも顧客が生産現場をうろうろし、自分の仕事のかたわら、彼ら彼女らに対応しなければならないとしたらどうだろうか。顧客が何の前触れもなく次から次へと訪れて、自分たちが検討に検討を重ねてきた生産プロセスをあちこちいじり、混乱を引き起こしたとしたらどうだろう。
大半のサービス企業にとって、これは日常的な出来事であり、ごく当たり前のことである。レストランやレンタカー代理店など、サービス業が成熟化した経済の多くを占めるようになったとはいえ、顧客は「サプライチェーンの終点で口を開けた財布」ではない。彼ら彼女らは、サプライチェーンの途中に直接参加してくる存在なのだ。
これら顧客たちは、ありとあらゆる変数をオペレーションに反映させるように求める。また、サービスに一貫性がなければクレームをつける。これが、サービス企業が日々直面している現実なのである。
サービスの世界では顧客がさまざまな変数を生じさせるため、サービスを生業としている企業にとって、これらの変数に対応することは最重要課題の一つである。ところが、これまでの教育研修ではあまり重視されておらず、その解決に役立つツールもない。
オペレーション管理の理論においては──これはもともと製造業を対象にしている──変数はとにかく排除すべきものであり、教育研修では、例外なく「品質の敵」として扱われる。
しかしサービス業においては、そう単純な問題ではない。第1に変数の排除は必ずしも得策ではない。なぜなら、顧客はサービス経験の満足度を、自分によって生じた変数がどれくらい拒否されたかではなく、どれくらい許容されたかによって決めるからである。
第2に、サービス業では変数を排除すること自体、そもそも不可能である。というのも、製造業であれば、生産要素のコストや品質についてすべて自分で管理できるが、サービス業ではそれはできないからだ。サービス業の場合、顧客はきわめて例外的で重要な生産要素である。しかもこの要素は感情を持っており、それゆえ気まぐれで、企業の収益といった問題にもまったく無頓着だ。
したがって、顧客のせいでさまざまな変数が生まれる。この問題を解決するため、私はここ数年、サービス業を対象とした研究を重ねてきた。ありとあらゆるサービス業について調べ、経済的に成功を収めている企業、かたやコストが増えているにもかかわらず、顧客満足度が悪化している企業を見てきた。
本稿では、この研究から明らかになったことを紹介したい。これを参考にすれば、顧客によって生じる変数をどのように受け入れるか、どのくらい受け入れるか、それとも拒否するかについてより正しい判断を下せるようになるだろう。
詳しくは後述するが、顧客によって生じる変数の悪影響を抑える方法はけっして1つではなく、複数ある。ただし、すぐには見つからないこともある。いずれにしろ、まずは事の本質を見極め、次に対処法を考え、これに手直しを施すといった具合に取り組むことで、これらの変数をうまく処理できるだろう。そして最終的には、サービスの競争力を高めることができる。