見かけに惑わされてはいけない。上級幹部職に女性が就いているのはよいことだが、驚くことに、マネジメントの上層部に女性が比較的多くいる企業では、下級職に女性を雇用する傾向が同業他社よりも低いのだ。

 研究者らは7年間にわたり、250の米国の大手法律事務所を対象に、女性の採用頻度を調べた。また、マイノリティ・コーポレート・カウンセル協会が毎年実施している米国の法律事務所の多様性調査から、女性のパートナーやアソシエイトの人数のデータも収集した。その結果、女性9人が上級職に加わるごとに、女性が採用される下級職の平均数が1人減少することが明らかになった。これが問題なのは、一般的に女性候補者が採用される下級職の数が少ない会社ほど、女性が入社する可能性が低くなるためである。

 補足的な分析では、男女両方の下位レベルの専門職に対して出された採用のうち、入社に至ったのは平均41%だったが、企業が女性の採用を10件から9件に減らすと、女性が入社する割合は35%に低下した。これは現実的に重大な意味を持つ。「入社する若手女性の数がわずかに減少するだけでも、やがて複合的な影響により、長期的に下級職のジェンダーの多様性に多大な累積的影響を及ぼすおそれがある」と研究者らは指摘している。