エマソンをエマソンたらしめているものは何か

 私はエマソン・エレクトリック社外の人たちからよく質問を受ける──どうすればエマソンは「ああいうふう」になれるのですか、と。この質問は過去35年間にわたる当社の一貫した財務成績に対する関心を端的に示しているものだが、私の回答は、財務諸表をはるかに超えた内容を含んでいる。

 簡単に言ってしまえば、エマソンを「ああいうふう」にしているのは、ある効果的な経営プロセスである。我々は、慎重なプランニングと強力なフォローアップによって我が社の未来がつくられると考えている。我が社のマネジャーたちは、現在を上回る結果を求めて計画を立て、それを実現するために実行に移すのだ。

 このプロセスを動かしているのは、参加意識、集中力、規律、粘り強さなどを含む共有の価値観である。我々は、独特の、あるいは異色ですらある方針や手法にはほとんど執着しない。しかし、我々は我が社の方針を明確に意識して行動しており、おそらくこのことが我が社を異色な会社にしているのだろう。

 我が社の経営プロセスの根底にはいくつかの前提がある。たとえば我々は、収益性の高さとは言わば精神の状態だと信じている。経験が教えているところによれば、経営陣が基本に意識を集中させ、たえずフォローアップを行っていれば、我が社が年々利益を挙げられない理由は何もなく、このことはたとえ成熟して、魅力に乏しいと見られがちな製造業に携わっていても同じである。

 同様に我々は、企業が失敗するのはもともと理屈に合わない理由、つまり何をすべきかを経営者がわかっているにもかかわらず、何らかの理由でそうしないことが原因であると信じている。エマソンが強力な行動志向を貫いているのもこのためであり、我が社の戦略が適切に実行されるべく監視を怠らない。

 3番目に挙げられるのは、「長期的」とは「短期的」局面の連続から成り立っているという確信である。短期的にでも業績が低迷すれば、長期的な好業績の達成ははるかに困難になる。経営の基本は、毎分毎分、毎日毎日、毎週毎週の経営の積み重ねなのである。

 最後に「常にシンプルに」を忘れてはならない。優れた経営とは理論上は単純だが、実際に実行するのは難しいものである。ピーター・ドラッカーも指摘しているように、マネジャーは複雑なアイデアや概念、つまり紙の上では素晴らしく見えるものの、実際には何の役にも立たない考え方に知らずしらずのうちに目が向いてしまう性向があるようだ。企業は単純なプラン、単純なコミュニケーション、単純な計画、そして単純な組織を実現するために最大限の努力を払わねばならない。物事をシンプルに保つには真の規律が要求される。

 したがって、我が社のあり方について尋ねる人に対する私の答えは、その持つ意味は極めて深いものの、本質はけっして複雑ではない。つまり、エマソンにおいて我々が高水準の業績を一貫して達成するためにやっているのは、確固とした経営を、頑固に実行することに尽きる。