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顧客はシームレスな体験を求めている
最近の知識豊富な法人顧客は、企業と対話する際に高い期待を持っている。商品やサービスに関する情報がほしい時であれ購入を予定している時であれ、あるいはデジタルチャネルを利用している時であれインサイドセールス(内勤営業)やフィールドセールス(外勤営業)の担当者と話している時であれ、パーソナライズされたシームレスな体験を求めている。
しかし残念ながら、大半の企業はこうした期待に応えられていない。各部署がサイロ化され、ばらばらなデータ、断片的な知識、不完全なデジタルケイパビリティを使って対応している。これでは、マーケティング、営業からカスタマーサービスまで、組織のあらゆる部門の担当者がリアルタイムに同期されたデータやインサイトにアクセスし、即座に顧客インタラクションに役立てることなど、とうていできない。
考えられる解決策の一つは、「デジタルカスタマーハブ」(DCH)をつくることだ。デマンドセンター、デジタルカスタマープラットフォームなどとも呼ばれるDCHは、つながりのない別々のシステムで発生する大量の顧客インタラクションデータを、リンクされた一つのプラットフォームに統合し、専任のリーダーに運営を任せることで、企業のデジタルエンゲージメントケイパビリティを高める。これらのケイパビリティとデータを統合した企業は、アナリティクスとAIを駆使して、データから実用的なインサイトを引き出すことができる。これは、営業、マーケティング、サービス、サポートなど顧客と直接やり取りするチームが、互いに協調して首尾よく業務を進めるうえで役に立つ。
DCHを確立するには、資金、技術、組織の壁を乗り越えなければならない。既存のシステムがサイロ化された部署内にある場合はなおさらだ。壁を乗り越えるにはリーダーシップが求められ、CEOレベルの力が必要な場合もある。DCHの構築は、多くのCEOにとって最優先すべき事項だと筆者らは考えている。DCHの導入に成功すれば、優れた投資利益率(ROI)を実現できる可能性があるからだ。
本稿では、企業がDCHによってどのように価値を創出できるかを説明し、自社のDCHを構築する際に検討すべき疑問や課題について検討する。
DCHはどのように価値を創出するか
大多数のB2B企業は、営業のインタラクションを調整するために顧客関係管理(CRM)システムを利用している。また、多くの企業は、リードジェネレーション(見込み客の獲得)と顧客エンゲージメントに、ウェブサイト、モバイルアプリ、メール、ソーシャルメディアを含む複数のデジタルプラットフォームを用いている。それらを提供するのは、セールスフォース、アドビ、SAP、オラクル、ハブスポット、さらに何十社もの中小のサプライヤーである。これらのシステムがDCHの基本的な要素だ。
DCH導入の成功例の一つが、エネルギー管理とオートメーションの企業、シュナイダーエレクトリックである。同社はDCHという言葉を明示的に使っているわけではないが、セールスフォースと提携し、技術インフラ、データリポジトリ、分析ツールボックスを含む統合システムを構築した。
シュナイダーの営業、サービス、マーケティング、カスタマーサポートの各チームは、過去のインタラクションデータや顧客サービス事例なども活用し、全体的な視点でそれぞれの顧客を捉えている。客先で稼働するシュナイダー製品にはセンサーが組み込まれており、これがIoT(モノのインターネット)データを収集している。シュナイダーの最高マーケティング責任者(CMO)を務めるクリス・レオンは、「『デジタル・オポチュニティ・ファクトリー』は、システムのアップグレード、刷新、交換が必要と思われる顧客を特定します。そのような機会をスコア化し、適切な営業担当者につなげます。それぞれの機会を販売に転換できる確率をインテリジェンスエンジンが予測するため、営業担当者は生産的に時間配分できるようになります」と説明する。