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リーダーのあいまいな発言が混乱を招く
なぜ多くの企業が、混沌としているのだろうか。その理由を知りたければ、そのような企業の経営者の発言に注目してみるとよい。
いかなる職位であろうと、リーダーという仕事はけっして気楽なものではない。くわえて、その発言が曖昧模糊としており、しかもネコの目のように変わることから、その職務をことさら難しくしている人たちがいる。彼ら彼女らは、概して「今四半期は最優先課題に集中しよう」「お客様第一」「今月は技術力で全面攻勢に打って出る必要がある」といった決まり文句を掲げてしまう。
このように、会社の針路について、たしかに立派で包括的だが、あいまいな表現で何度も何度も繰り返す。具体的には、解釈の広い用語、たとえばビジョン、ロイヤルティ、責任、顧客リレーションシップ、チームワーク、重点課題、優先順位、文化、節約、意思決定、業績など、社員全員が自分と同じように定義していると思い込んでいるリーダーがまことに多い。
CEOがこのような仰々しい表現を口にすれば、経営幹部ですら、うやうやしくうなずいてしまう。とはいえ実のところは、どこか戸惑いを覚え、自分の理解が正しいのかどうか、確信できずにいるのかもしれない。
しかし、あえて具体的な説明を求めて無知に見られるのを嫌って、そのまま漠然とした出動命令を部下たちに伝えてしまう。すると、部下全員が上司の意図を勝手に解釈することになる。
上司が考えている本当のところを知りたいと切望しても、それに応える具体的なコミュニケーションが欠けているため、部下たちは真意を推し量ろうと、さまざまに想像をめぐらせる。それが、いい加減で、ばらばらな行動を招いてしまうことが少なくなく、これが原因で大きなダメージに発展することすらある。つまり、貴重な時間が浪費され、噂が飛び交い、有能な人材が目標を見失い、重要プロジェクトが失敗してしまうのだ。
これとは対照的に、病院のER(緊急治療)スタッフやSWATチームなど、高い信頼性を要求されるチームの仕事ぶりを見てみるとよい。これらのチームのメンバーたちは、全員が物事の意味を正しく理解している。外科医と看護師は同じ医学用語で会話する。また、SWATチームは使用すべき武器について、これを使用するタイミング、方法、条件についても正確に合意している。
これらの仕事では、おざなりなコミュニケーションはいっさい許されない。チーム・メンバー同士の会話があいまいだと、だれかの命が危険にさらされるかもしれないからだ。さすがに企業組織においてこのような事態はなかろうが、リーダーが具体的な定義と指示を怠れば、部下たちの仕事の実効性が薄れ、どこかに矛盾が生じるようになる。
企業をコントロールする5つのトピック
過去5年間、私はエグゼクティブ・コーチとして、取締役として、またベンチャー投資家や戦略コンサルタントとして、何百人ものCEOと接してきた。また、かつては私自身もホイッスル・コミュニケーションズという会社の社長兼CEOを務めていたことがある。なお同社は、1999年にIBMに買収された。