いまだ知られていない
COOの特殊性

 2000年6月、オラクルの創業者でありCEOのローレンス・エリソンと、彼の下でCOOを務めてきたレイモンド・レーンが袂を分かった。この事件はあたかも芸能人の離婚劇のように、マスコミ各社にこぞって取り上げられた。

 フォーブス・ドットコムの記者、デイビッド・アインシュタインは「レーンは辞職を申し出たのか、はたまた解任されたのか」と記事のなかで問いかけ、「エリソンの女房役を8年間務めた人物がなぜ突然退職したのか、その理由の手がかりだけでも」知りたいと述べた。

 これに続いて、CNETニュース・ドットコムは次のように報じた。「この絶大な技術力を誇る企業でレーンが味わってきた苦労は、傲慢、強欲、裏切り、そして自己顕示欲にまつわる物語といえる」

 そして読者には、2つの謎が未解決のまま残された。一つは、称賛に値する業績を常に上げてきたかに見えるレーンがなぜオラクルを去るのかということ。もう一つは、この一件がまるでテレビ・ドラマのように報じられる理由である。

 いまやスポーツ選手よろしく、企業幹部の移籍もけっして珍しい話ではない。ただしこの突然の退任劇は、社内の陰謀や経営陣内の確執が見え隠れしたため、否が応でも人々の好奇心に火をつけた。

 我々はこの一件で、COOの役割の特殊性をあらためて認識することになった。この事件以後に実施した調査で、我々はこの特殊性に切り込んだ。数十人のCOO経験者、腹心としてCOOを置いたことのあるCEOたちにインタビューを試み、組織論の研究者たちがほとんど見向きもしなかったテーマについて、新たな洞察を導き出した。我々の発見に照らせば、新聞の見出しを時折飾る経営幹部の造反劇はもちろん、COOという縁の下の力持ちの成功談も、はっきりと理解できるようになる。

 本稿では、我々が見出した成功要因と失敗要因を解説しながら、「ナンバー・ツーがその力を発揮する状況」「ナンバー・ツーの存在によって、必然的に緊張と不和が生じる状況」といった関連事項についても考察する。

 COOにしろ、別の役職名にしろ、業務執行の最高責任者たる経営幹部がその役割をまっとうできるかどうかによって、企業の命運は大きく左右される。しかも、そのようなケースはますます増える傾向にある。だからこそ、COOの成功要因を理解することが不可欠なのだ。