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いまこそ経営理論が求められる
本連載では、世界の経営学で「標準」と見なされる経営理論や、将来的に標準となることが期待される先端理論を、1年余りにわたって解説していく。結果として、ビジネスパーソンにとっては、正解のない時代に考え抜いて意思決定をするための座標軸(思考の軸)を提供し、また研究者やコンサルタントには新たな経営理論の知見を提供することを狙いとしている。
本連載は、2014年から2018年にかけて『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)誌上で展開した「世界標準の経営理論」の続編に当たる。当時の連載は反響を呼び、延べ44回にわたって掲載された。その後、連載を大幅に加筆修正した書籍『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社、2019年)が刊行され、15万部を超えるベストセラーとなっている。
ではなぜ、一度完成したはずの「世界標準の経営理論」をあらためて連載するのか。この疑問については、本稿の後半で説明する。しかしそれに先立ち、筆者がこの新連載の第1回で訴えたいのは、「いまこそ『世界標準の経営理論』の時代である」ということだ。
日本中のビジネスパーソンが経営理論を思考の軸として、自身の考えを深化させ、磨き、思考を解き放つべき時代が到来している。この時代の到来を踏まえ、読者の視座をさらに高めるために、連載の再開が不可欠と判断したのである。
そして筆者がこのように考える最大の背景は、言うまでもない。AI大全盛時代が到来したからである。
AI大全盛の時代
世界はいま、AI技術の革新による大きな変革期を迎えている。ディープラーニング(深層学習)技術が飛躍的に進化し、大規模データセットとGPU(グラフィックスプロセシングユニット)の発展により、AIの性能が急速に向上している。
端緒となったのは、2012年に行われた「イメージネット」コンペティションだ。ここでトロント大学の研究チーム(のちにグーグルが引き抜く)の「アレックスネット」が深層畳み込みニューラルネットワーク(deep convolutional neural network, CNN)とエヌビディア製のGPUの力を活用し、画像認識の深層学習においてトップ5エラー率を15.3%まで下げるという飛躍的な成果を挙げたのだ。
2016年には、グーグルディープマインドのAlphaGo(アルファ碁)が韓国の囲碁棋士の李世乭(イ・セドル)九段に勝利し、世界的ニュースとなった。一般のビジネスパーソンの間でAIという言葉が頻繁に使われるようになったのは、この頃からだろう。