過去のデータから将来の行動を予測できるか

 あなたはCMO(最高マーケティング責任者)で、いま3カ月ごとに発送する宣伝用のダイレクト・メールについて検討しているとしよう。

 あなたは、一度製品を購入した顧客は再購入してくれる可能性が高いことを知っている。さらに、2回購入した人が3回目の購入を意思決定する可能性は、1回購入した人が2回目を決定する可能性よりも高く、購買回数が増えるほど、この傾向は顕著になる。

 とはいえ、ダイレクト・メールの送付には多大な費用がかかり、過去、ダイレクト・メールに反応して、実際の購買に結びついたことは、わずか3%ほどであることもわかっている。株主や証券アナリストは、あなたの会社のマーケティングROIに注目しており、あなたは顧客に効果的に接触する必要がある。

 そこであなたは、会社が最近採用したCRMシステムに目を向ける。このシステムは、顧客一人ひとりに対しそれぞれがいつ、何を購入したのかをもれなく追跡している。ここに蓄積されたデータを使えば、特定の購買パターンを有する既存顧客が、特定の製品を特定のタイミングで購入する確率を判断できるはずだ。

 このような情報に基づいて、ある製品を購入する確率が最も高い顧客に狙いを定められるだけでなく、この顧客層にいちばん訴えるであろう製品を選んで提示することも可能なはずだ。さらに、反応の悪そうな、あるいは次々に送りつけられるダイレクト・メールにうんざりしているかもしれない顧客に、コストを無駄に費やすこともなくなるはずである。

 このような効果が実現すれば、あなたの会社のROIは著しく向上することだろう。このようなITツールを駆使して、より厳密に対象顧客を絞り込み、発送メール数を削減すれば、顧客ごとに発送する内容をカスタマイズするコストを補って余りあるメリットにあずかれよう。

 以上のようなことは、少なくとも理論的には正しい。しかし残念ながら、多くの企業が豊富なデータを収集しているにもかかわらず、顧客行動の予測精度はあまり向上していない。