事業提携が低迷していく理由

 航空業界から石油探査、製薬から半導体まで、ありとあらゆる業界において、事業提携は重要な役割を果たしている。事実、我々が調査したところによれば、平均的な企業の総売上げ、または総資産、総利益の15~20%は何らかの事業提携によるものであることが判明した。

 しかし、エアバス、ビザ・インターナショナル、SBCコミュニケーションズとベルサウスによるシングラー・ワイヤレスなどの成功例もあるが、その多くはぱっとしない。ジョイント・ベンチャー(JV)事業の成功率は50%弱にすぎず、その平均寿命はわずか5~7年である。多くの経営者が、事業提携にまつわる不安定性に不満をこぼすのも無理はない。しかし、問題は不安定性ではなく、安定性にある。つまり、ほとんどの事業提携があまりにも安定しすぎているのだ。

 事業提携は、新市場に参入する、破壊的技術を開発するなど、先行きが不透明な状況で利用されることが多い。また成熟産業では、業界の再統合を推し進めるツールとして使われている。このように事業提携はまさしく変化の渦中で実施されるため、これを成功させるにはたえず進化していかなければならない。

 しかし一般的に、JVの業績やリスクに本社が介入しようにも、なかなかうまくいかない。また、好調なJVを事業拡大させるタイミングを逸することもある。逆に、すでに役目を終えた提携関係をはじめ、現場のオーナーシップだけではもはや成功は望めない案件の解消を先延ばしにしているケースも多い。

 この結果、膨大なチャンスが見逃されてきた。我々は2004年、30余社の企業を対象に調査を実施した。この結果によれば、その7割以上が、業績が低迷し、リストラを必要とする大規模な提携事業を抱えていた。また、事業範囲を拡大するなど、リストラを試みたJVの成功率は79%だったが、リストラをなおざりにしたJVの成功率は33%にすぎないこともわかった。

 中国に進出するに当たって、ほとんどの企業がJVを採用してきた。多国籍企業30社の中国におけるアライアンス・ポートフォリオについても調査したが、業績を上げている企業の多くが現地のJVに何らかのリストラを試みており、その割合は、業績の低迷している企業の2倍に上る。実際、大規模なJVならば、これ一社をリストラするだけで、年1億~3億ドルの売上げ増を実現できる。

 しかし、リストラクチャリングによって収益性を改善するのは生半可なことでない。さまざまな理由から、JVのリストラは一事業部門のそれよりもはるかに難しい。我々は20件を超える事業提携やJVのリストラを手がけてきた。また、世界最大規模のJVの取締役やCEOなど、50人を超える経営幹部にインタビューを実施した。その結果、提携事業をリストラするためのベスト・プラクティスが明らかとなった。

 我々の定義では、事業提携とは、リスクと支配権の分担、売上げの分配、一定の業務の統合と相互依存を伴う2社以上の契約である。したがって、独立性を維持したままの企業間取引とM&Aの中間に位置する、あらゆる提携形態を指す包括的な用語である。