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【HBR CASE STUDY】
[コメンテーター]
ブルース K. リッグス(Bruce K. Riggs)ゲートウェイ シニア・バイス・プレジデント
バリー C. リン(Barry C. Lynn)ニュー・アメリカン・ファウンデーション シニア・フェロー
王 東昇(Dongsheng Wang)京東方科技集団 董事長兼CEO
ポール・ギャフニー(Paul Gaffney)ステープルズ バイス・プレジデント
[ケース・ライター]
黄 明恵(Ming-Hui Huang)国立台湾大学管理学院 資源管理学系=(=:既の下に旦)研究所 教授
*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。
かつての上司と部下の再会
「グレッグさん、またお会いできて光栄です。お久しぶりですね」と笑みを浮かべ、ジョー・リンが手を差し出した。差し出されたグレッグ・ジャミソンは、アメリカの電子機器メーカー、USテックのグローバル調達担当の責任者である。ジャミソンも笑顔でリンの手を握り、「私も嬉しく思います。本当にお久しぶりです」と答えた。
ジャミソンはしばし間を置いて、リンがUSテックのアジア地区調達担当の新任マネジャー、モリス・チャンとあいさつを交わすのを待った。しかし、リンはチャンを無表情で見つめ、戸惑った様子を見せたかと思うと、これから2階で開かれるミーティングに出席するために到着した人たちにあいさつした。
どうも事態は、ジャミソンの予想以上に深刻だった。チャンは最近まで、USテックの主要サプライヤーであるタイソース、すなわちリンがCEOを務める企業で働いていたのだ。台湾のODM(相手先ブランド設計製造業者)であるタイソースは、主にアメリカ市場向けに、USテック製品の設計と製造を請け負っている。チャンはタイソースで、大口顧客であるUSテックの窓口担当者だったのである。
USテックがアジア調達部門を設置して、そのマネジャー職を募集したところ、チャンが応募してきたのだが、チャンの経験と実力から文句なしに採用が決まった。リンの長年の部下だったチャンが退職したことで、リンが腹を立てているかもしれないとジャミソンは思った。しかし、リンがチャンのことを裏切り者とすら考えているとは思いもよらなかった。リンとチャンがうまくいかないとなると、タイソースとの長年にわたる良好な関係にひびが入りかねない。