-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
なぜ女性はキャリア形成で男性に後れを取るのか
数字が語るのは次のようなストーリーだ。女性は40年以上も前に男性と同等の教育水準を達成し、現在は公教育において男性を上回る成果を挙げている。たとえば、2021年に米国の学士号取得者全体に占める女性の比率は59%であり、修士号では63%、博士号では57%となった。
これは女性にとって喜ばしいニュースだ。しかし、卒業したとたんに何かおかしなことが起こる。女性はたちまちこの優位性を失ってしまうのである。米国で企業に採用される従業員に占める女性の比率は、わずか48%にすぎない。初めてマネジャーに昇進する頃になると、男性100人に対して女性は81人しか昇進していない。これは、5年間のうちに100万人の女性がキャリアのスタート地点で後れを取ることを意味している。企業の昇進の階段において、最初のステップが壊れているために、前進を阻まれてしまうのだ。
それだけではない。女性はキャリアの全過程を通じて形勢が不利になり続けていく。シニアマネジャーやディレクターのレベルでは、女性の比率が37%に下落し、バイスプレジデントのレベルでは34%に、シニアバイスプレジデントやCスイートの最高幹部レベルでは29%に下落する。
有色人種の女性の場合は、この数字がさらに厳しいものとなっている。現在、すべての有色人種の女性を合わせても、Cスイートに占める比率はわずか7%にすぎない。シニアレベルのリーダーシップで女性の比率が減少するという類似の現象が、世界中で観察されている。
これらのすべてを知って湧いてくる、よくある疑問は次のようなものだ。教育における平等が達成されて40年が経ったにもかかわらず、女性がいまだに職場において平等の達成にはほど遠い状況にあるのはなぜか。キャリアのスタート地点で、女性が男性とまさに同等の、それどころか男性をしのぐほどの適格性を持っているならば、職業人として出世していくすべての過程で女性の比率が高くなるはずではないのか。職場において、特にシニアレベルにおいて、なぜこのように厳然たる男女格差が存在するのだろうか。
大きな理由の一つは、教育やエントリーレベルのスキルは、稼得能力の一部を形成するにすぎないということだ。残りは職務で獲得した知識、スキル、知恵がベースとなる。筆者らはこれを「経験資本」と呼ぶ。
経験資本を確立する方法が男性と女性でどのように異なるかを理解するために、筆者らはキャリアの実際の軌跡を追跡できるような長期データを使い、米国の専門職者約8万6000人のプロフィールを分析した。興味深いことに、筆者らの分析では女性は男性とまさに同じ頻度で仕事を変え、新しいスキルを学んでいた。しかし、男性のほうが、縮小分野の職業から成長分野の職業に移る比率が高かった。また、男性が職を変えると、女性よりも賃金が上昇する比率が高く、反対に女性は賃金が低下するケースが多かった。
経験資本は、雇用主が提供する学習プログラムや能力開発プログラム、新たなスキルをレパートリーに加えるという挑戦を伴う職務の変更、また同僚や上司が複雑なタスクや困難な状況に対処する方法を観察することなどを通じて獲得できる。しかし、経験資本を確立することだけが問題ではない。もう一つ重要な要素がある。それは、その経験資本が新たな機会や昇進、報酬の増加という形で評価されることだ。