CEOの参謀ほどエキサイティングな仕事はない

 CEOにアドバイスするといえば、まさに夢のように素晴らしい仕事という響きがある。角部屋のCEO室は、まさしく権力の座を示しており、企業活動の中枢といえる。そこにいるのは、産業界屈指の切れ者であり、カリスマである。

 CEOの参謀は最高の経営手腕を誇るリーダーと手を携え、何万人もの人々に影響を及ぼす課題に取り組む。それは、現実の世界を一変させてしまう可能性を秘めた類稀な仕事である。

 しかし、CEOにアドバイスすることはそのまばゆさゆえに、裏返せば、困難と危険を覚悟しなければならない。参謀には、己の動機、忠誠心、行動についてたえず自問自答することが求められるばかりか、CEOと一緒に格闘中の企業課題よりも、この己への問いかけのほうがかえってやっかいな場合もある。

 このようなことを申し上げられるのも、過去25年間、数十社のCEOにアドバイスを提供する者として、私自身がそのような自問自答を繰り返してきたからである。その間、社内政治でのちょっとしたつまずきから巧妙に仕組まれた罠に至るまで、さまざまな災難に巻き込まれたこともあれば、目撃した経験も数え切れない。

 CEOの参謀という役目が比類ないものであるのは、CEOという役目が同じく比類ないものであるからにほかならない。例外なく参謀は、クライアントすなわちCEOと共生関係にあり、吸う空気も同じなら、挑む難問も同じである。むろん、ビジネスの世界において最も薄い空気を吸いながら、最も複雑な課題に取り組んでいるのは、ほかならぬCEOである。

 過去5年の間に、CEOが、取締役会、投資家、各種団体、マスコミ、政治家、監督機関から受ける風当たりは強まる一方だった。しかし、これら激しい嵐が吹き荒れる以前の比較的穏やかな時代から、CEOの仕事は唯一無二のものだった。その特徴を以下に挙げてみた。

(1)CEOは社内のだれよりも、偏りのない情報を欲している

 CEOは、自分の関心を引こうとする者が何か通したい案件を懐に隠していることを頭ではわかっている。しかし実際には、その案件を検討する際に生じる偏見を必ずしも承知しているわけではない。実のところ、社内参謀も己の偏見について見落としているかもしれない。このような場合、社内参謀の見解は、その偏見をそのまま反映した、単なる主観的意見となってしまう。

(2)CEOはだれよりも耳の痛い真実を聞く必要がある

 CEOを目の前にすると、どんな社員も身構え、ややこしい話題を避けたがるものだ。タイム・ワーナーのCEO、リチャード・パーソンズはどちらの側にも身を置いたことがある。彼は私に次のように語ってくれた。

「私は前のCEO、ジェラルド・レビンの側近を長年務めてきましたが、実のところ、CEOである彼に持ち出したくない話題がいくつかありました。ですから、私の下で働いている社員たちもおそらく似たり寄ったりだろうと考えています」

(3)CEOはだれよりも批判の矢面に立たされる

 その役回りゆえ、必然的にあらゆる怒りや不平不満、さらに、時には耐えがたい屈辱にまみれなければならない場合がある。難問が山積の某ヘルス・ケア企業のCEOは、週末が待ち遠しいと語った。