【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
ラージ・コンダー
(Raj Kondur)ニルバーナ・ビジネス・ソリューションズ CEO
ジェームズ M. シトリン(James M. Citrin)スペンサー・スチュアート シニア・ディレクター
モーリス・トリーシー(Maurice Treacy)サイエンス・ファンデーション・アイルランド ディレクター
アルノ E. ハスルバーガー(Arno E. Haslberger)ウェブスター大学ウィーン校 講師
シャーマン・イサリー(Sharman Esarey)ヨーロッパ安全保障協力機構 年報編集責任者

[ケース・ライター]
アイリーン・ロッシュ(Eileen Roche)
HBR アソシエート・エディター

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

突然のビッグ・ニュース

 雨の木曜日の朝、オフィスに向かうジョン・ドゥーリは、寒々しい天気にもかかわらず、すこぶる上機嫌だった。彼が勤めるグローバル・バイオテクノロジー企業、バイオソルはつい最近、ぜん息の治療用抗体の分野で大きな進歩を遂げた。この勢いが続けば、同社だけでなく、年齢を問わず多くのぜん息患者が恩恵に浴することになる。

 ジョン個人としても、そのキャリアに大きな弾みがつくだろう。そう、昨日上司のニール・ドイルからそのようなことを言われたばかりだった。いわく「本社もすっかり感心していたよ。今後の進め方について、さっそく明日にでも話し合おうと言われている」。

 昨晩、子どもたちがベッドに就いてから、ジョンは妻のフィオーナと一緒に、今回の成功が家族全員にどのように影響するのかを話し合った。ジョンは現在、R&D部門のバイス・プレジデントの職にあるが、その上のディレクターに昇進するのだろうか。それとも、まったく新規のプロジェクトを任せられるかもしれない。

 新規プロジェクトは、ジョンのやる気をいちばん高める仕事の一つだった。果てしない可能性が広がっているという高揚感、適材を結集してチームを結成するという挑戦、まったく新しい何かを発見した時の興奮──。