RBS:「最高の自分」を理解するツール

 第三者からのフィードバックは、どうしてもマイナス面が強調されがちである。しかも査定が始まると、たとえ全体的にはプラス評価でも、たいてい「改善の余地あり」といった部分に議論が集中する。

 ありていに言えば、非難による痛みは、称賛という慰めよりもずっと心に突き刺さる。多くの研究が示しているとおり、我々は否定的な情報に強く反応する。たとえば、いまでも強く心に残っている出来事は何かと問うと、肯定的な思い出1つにつき、否定的な思い出を4つ挙げるという。

 多くのマネジャーが査定の結果を部下たちに手渡す際、子どもが歯医者に行く時のような気持ちになるのは不思議ではない。もちろん従来のフィードバックは一定の役割を果たしている。いかなる組織でも成績不振の社員をその職場に置いておくことはできない。また、だれもが期待値以上の仕事を求められる。

 残念ながら、粗探しのフィードバックのおかげで、有能なマネジャーですら、自覚している弱点を矯正することにやっきになったり、ふさわしくない型に自分を押し込めたりしかねない。皮肉にも、マイナス面に焦点を当ててしまったせいで、得られるはずの最高の業績を逸している。

 要は、すべてのポジションをうまくこなせる野球選手などめったにいないのだ。生来の三塁手が、なぜ右翼手に必要な技術を苦労して身につけなければならないのだろう。

 ギャラップ・オーガニゼーションのリサーチャー、マーカス・バッキンガムとドナルド・クリフトンをはじめ、何人かが次のような代替案を提唱している。「三塁手ならではの強みを特定し、それを活用することで、その人物の長所を伸ばす」

 たいていの人間は、批判が記憶に残る一方で、称賛にも反応する。まさしくパラドックスである。批判されると、だれもが身構え、その結果、みずからを変革することに抵抗する。しかし、称賛されると自信が芽生え、より優れた成果を出そうという気持ちが湧いてくる。

 自分の強みを確立することで、可能性を最大化できる。ただし、この建設的なアプローチは、従来のフィードバックによって特定された問題点を無視したり、否定したりするものではない。むしろ、否定的な評価を相殺し、まったく異なるフィードバックを経験させるものだ。マネジャーが自覚しているか否かにかかわらず、本人の強みを引き出し、その結果、所属組織にいっそう貢献するようになる。