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最高のアドバイスが贈られた時
ある若手マネジャーは、仕事で初めて大きな試練に直面している。彼のプロジェクトは社内の注目を集めているにもかかわらず、スケジュールは遅れ、予算も超過している。そしてチーム・メンバーたちは、リーダーとしての彼の資質に疑問を抱き始めている。
意気消沈し混乱した彼は今後の指示と励ましを求めて、メンターであるシニア・エグゼクティブに会った。メンターは部屋のドアを閉めると、彼に椅子を勧めた。自分の戦争体験をぽつりぽつりと語り、プロジェクトの方向転換を図る方法について、いくつかの具体的なアドバイスを与えた。
そして彼が席を立とうとした瞬間、メンターは個人的なアドバイスを述べた。それは力強く、慈愛と知恵にあふれた言葉であり、若手マネジャーはそのアドバイスを生涯忘れることはなかった。
深謀遠慮が重ねられた、心にまっすぐ届くようなアドバイス──。それは、まるで「おじいさんの時計」のように、何世代も語り継がれていく。これがビジネスにおけるアドバイスのあるべき姿である。
はたして本当にそうだろうか。いまから3年前、まだハーバード・ビジネススクールの学生だった私は、『ハーバードからの贈り物』の執筆に取りかかった。これは、教授たちが個人の体験談を交えながら語ってくれた、これから社会へ羽ばたかんとする若者たちに贈るメッセージを集めた本である。
その執筆中、こんな疑問が湧いてきた。成功を収めた経営陣は、自分の人生を変えるかもしれないメンターに、いつ、どこで、どのように巡り合ったのだろうか。
メンターと教師の違いは何だろうか。たしかに企業は学校とは別物である。出世の階段を駆け上り、役員用の大きな個室を手に入れるまでの過程で、経営陣に影響を及ぼすのはいかなるアドバイスなのだろうか──。
以下に紹介するエッセイはきっと、これらの質問への答えとなるだろう。私はさまざまな業界のCEO6人にインタビューし、次のような問いを投げかけた。