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よくある不毛な会議
四半期に一度の幹部ミーティングでのこと。新製品への投資が提案されている。資料は分厚く、投資額は大きい。説明が終わった。
沈黙が襲う。全員うつむくか横を向くかで、決して視線を上げようとしない。だれかが口火を切るのを待っている。自分の意見は言いたくないのだ。少なくともボスが賛成なのか反対なのかがわかるまでは。
痛々しいほどの沈黙を破り、ようやくCEO(最高経営責任者)が発言する。きっちりデュー・ディリジェンス(事前の詳細な調査)は済ませてきた、と言わんばかりに、若干の疑問をはさんだ二、三の質問をする。
彼がこのプロジェクトの支持を決めていることは明らかだ。すぐに他の出席者もCEOに同調し始める。前向きな意見にとどめるように気を使いながら。発言内容から判断すると、出席者一同がプロジェクト支持のようだ。
ところがこの「ようだ」というのがくせ者だ。実は、関連部署の部門長は自部門のリソースが、新規プロジェクトに持っていかれることを心配している。製造部門の副社長は、初年度の売上予測が恐ろしく楽観的な計画となっているので、商品が売れ残って倉庫にあふれることを懸念している。
他の出席者は、このプロジェクトが自分にとってプラスかマイナスかわからず、熱が入らない。それでも、決してだれも反対意見を口にしない。
会議は結論の出ないままお開きになる。その後の数カ月で、プロジェクトは戦略、予算およびオペレーション上の理由から緩慢な死を迎えた。こうなった責任がだれにあるかははっきりしない。だが、見かけのコンセンサスとは裏腹に出席者の本音が反対であったことは明らかだ。
「なんだかどこかで聞いたような話だな」と思われるだろう。筆者は大手企業や経営者などにコンサルティングを行ってきた。そのなかで、企業の最上層部でも、会議での沈黙に欺かれたり、アクション・プランの作成を怠ったばかりに、誤った意思決定を下すケースを、数多く目にしてきた。