犬猿の仲のウェンディーズとタイソンが和議の席に着いた理由

 2003年12月、ウェンディーズ・インターナショナルとタイソン・フーズの経営陣は、サプライチェーンのパートナーシップについて協議する会議の席に着いた。この時、両社の経営陣は互いに懸念を抱いていた。

 ウェンディーズ側には、過去に経験したタイソンとのいざこざを鮮明に覚えている者もいた。実のところ、わずか2、3年前、タイソンとは二度と取引しないという正式な決定を下していたのだ。一方、タイソン側にも、目標売上げの足を引っ張った顧客に警戒感を抱いている者がいた。

 しかし、状況は変わっていた。さもなければ、この日が訪れることはなかっただろう。

 第1は、顧客の嗜好の変化に合わせてウェンディーズのメニューが変わり、鶏肉が牛肉と同じ比重を占めるようになったことである。同社はこれまで、ある大手サプライヤーから鶏肉を仕入れていたが、新たなサプライヤーを探していた。

 第2は、タイソンが最近、牛肉の大手サプライヤーで、ウェンディーズと取引関係にあるIBPを買収したことである。これに伴い、IBPの社長兼COOのリチャード・ボンドがタイソンの社長兼COOに就任した。このトップ人事によって、一緒に仕事ができる人間がタイソンに登場したと、ウェンディーズ側は考えた。

 さらに、もう一つの変化があった。提携関係をスムーズにスタートさせるために開発された、「パートナーシップ・モデル」と呼ばれる新しいツールの存在である(図1「パートナーシップ・モデル」を参照)。

1 パートナーシップ・モデル

 1992年、グローバル・サプライチェーン・フォーラムの第1回会合で、参加企業は効果的なパートナーシップについて何らかの洞察がほしいという点で意見が一致した。

 参加企業各社の事例に関する調査結果に基づいて開発された「パートナーシップ・モデル」は、さらに何十件ものパートナーシップ・ファシリテーション・セッションを通じて改良が重ねられたものである。なお、このセッションの参加者たちは、パートナーシップを必要とする理由、すなわちドライバーをそれぞれ提示し、協力関係を促す条件について検討した。

 このモデルを利用することで、最も適したパートナーシップのタイプを判断し、必要なマネジメント・コンポーネントが強化される。後日、パートナーシップに不満が生じた場合、ドライバーやファシリテーターが変化していないか、コンポーネントのレベルが適切かどうかを確認すれば、パートナーシップを改善できる。

出典:Douglas M. Lambert, Margaret A. Emmelhainz, and John T. Gardner,
"So You Think You Want a Partner?" Marketing Management, Summer 1996.

 このツールは、オハイオ州立大学グローバル・サプライチェーン・フォーラム(GSCF)の協力を得て開発された。同フォーラムへの参加企業15社におけるパートナーシップのベスト・プラクティスから得られた教訓を取り入れ、各社がパートナーシップに期待するところを調整し、最も生産的な協力関係を判断するプロセスを提供するものである。