CRMの捲土重来

 1990年代後半から2000年にかけて、顧客リレーションシップに関するデータ管理とその強化に向けて、ITシステムに多額の投資が傾けられてきた。すなわち、CRMパッケージを活用すれば、顧客ニーズの変化に効率よく、時には即座に対応し、売上げと顧客継続率を維持できるばかりか、マーケティング・コストも節約できるのだと。

 ところが、大半のCRMプロジェクトが期待どおりの結果には至らなかった。それ以降、経営者たちはIT投資を大幅に削減し、CRMの売上げも低迷した。ガートナー・グループによれば、CRM関連の売上げは99年から2000年にかけて28%増加した。しかし、2001年には5%、2002年には25%、2003年には17%と、それぞれ減少している。

 この辺りの状況に明るい人たちは、CRMもいずれERPと同じ運命をたどるに違いないと考えた。つまり、ITブームを牽引してきたとはいえ、当初の約束が果たされなかったがゆえ、早晩ほとんど見向きもされなくなるだろう。

 ところが、予想外の展開が訪れた。何と、以前にもましてCRMに力が入れられるようになったのである。

 2003年、ベイン・アンド・カンパニーがグローバル企業の経営者708人を対象に、マネジメント・ツールに関する調査を実施した結果、CRM投資に満足していると回答する企業が増えていることが明らかになった。

 2001年当時、世界の経営者が選ぶマネジメント・ツール上位25のリストで、CRMはほぼ最下位にランクされていた。しかしその2年後、CRMは大きく順位を上げ、調査対象となった経営者の82%が2003年中にCRMの導入を計画していると回答している。2000年のCRM導入率が35%であったことを考えれば、これは大きな飛躍である。

 今日、CRM関連支出は増加傾向にある。ガートナーは、2005年末までに、CRM全体の売上げは10%増加すると予想している。いったい何が変わったというのか。落胆から満足へ、悲観から楽観へ、そして削減から拡大へと状況が一変した理由とは何なのだろうか。

 この疑問に答えるため、我々はCRMの導入に成功した企業を調査し、そこに共通する特徴をいくつか発見した。特筆すべきは、いずれの企業も、体系的なアプローチを採用して実効性を高めていること、また対象範囲を狭めたうえで、あまり高すぎない目標を掲げ、そこに集中していることである。