フォロワーを知って
リーダーシップを考える

 企業の物語に出てくるヒーロー──ただし、時には悪者として登場することもあるが──はまぎれもなくリーダーその人である。

 リーダーが人々をやる気を鼓舞することで、とうてい不可能に見えることも実現することが可能になる。組織を変革するにも、高い業績を上げるにも、彼もしくは彼女の存在なしには、まず無理である。どのような事業環境であろうと、優れたリーダーシップこそ、最も重要な競争優位の源泉なのだ。

 したがって、成功したリーダーシップについて研究することに経営学者たちが熱心なのも、あながち不思議ではない。同様に、多くのビジネスマンが、リーダーシップを発揮する技術を理解し、習得することにひとかたならぬ努力を傾けるのも当然といえよう。

 ただし、その際に見落とされがちなのが、リーダーシップは2つの要素から成り立っていることである。リーダーが人々の上に立つには、並外れた才能だけでなく、部下たち、すなわちフォロワーたちを引きつける能力も兼ね備えていなければならない。

 しかし残念なことに、人々を従わせるのはますます難しくなりつつある。しかも困ったことに、ほとんどのビジネス書がフォロワーに焦点を当てることはなく、せいぜいリーダーの資質について言及する際、申し訳程度に触れるにすぎない。

 表現を換えれば、フォロワーは、リーダーのカリスマ性や一挙手一踏足に反応するだけの単純な存在と見なされているといえる。ところが、ほとんどの分析が見落としているが、フォロワーにはフォロワー固有の特徴というものがある。

 私の30年に及ぶ精神分析医、文化人類学者、ならびに経営コンサルタントとしての経験から申し上げれば、リーダーたちがリーダーとして振る舞うように、フォロワーにも同じく、フォロワーとして行動させる強い力が働いている。