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多くの企業が産業変化のパターンを理解できていない
自社の属する産業がこれからどのように変化するか。これを見極めない限り、賢明な投資など望むべくもない。
もし産業全体が急進的変化のさなかにあるならば、これまでの事業をすべて放棄しなければならないのかもしれない。産業全体が緩やかな段階的に変化しているならば、おそらくコア事業に再投資すべきだろう。
産業全体に起こっている変化を理解せよ──。そんなことは当たり前であると思われるかもしれないが、産業動向は必ずしも簡単につかめるわけではない。変化の兆候を読み損なって、間違った判断を下すといったことは毎度のことである。
たとえばオークション会社のサザビーズは、インターネットは新しい販売チャネルにすぎないと考え、オンライン・オークション事業に投資した。自社サイトのほかにアマゾン・ドットコムとの合弁事業も立ち上げた。ところが実際には、インターネットはオークション産業の構造を根本から揺るがすほどの衝撃であった。
自社が属する産業がどちらの方向に向かっているのか、これを正確に把握するには、一般ビジネス誌からの雑音や、競合他社からの圧力をいったんシャットアウトし、自社の事業環境を長い目で見通さなければならない。
私は同僚と一緒に、この一連の作業に長らく取り組んできた。以下に述べる研究報告は、アメリカ産業界を広く横断し、さまざまな企業を大所高所から俯瞰した結果に基づいている。
この研究は1990年代初めに始まり、いまも続いているが、そもそもは産業構造そのものについて、またその収益性や投資とリターンの関係をテーマとしていた。まず産業統計を分析することで、産業が変遷していく過程に関する仮説がいくつか導き出された。次に、産業構造、産業の変化、競争優位に関する多数のケース・スタディに照らしながら、これらの仮説を検証し、精緻化を試みた。