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【HBR CASE STUDY】
[コメンテーター]
ポーラ・ブラントナー(Paula Brantner)ワークプレース・フェアネス プログラム・ディレクター
ブライアン・フリン(Brian Flynn)シュロスバーグ・フリン 共同創業者兼CEO
フランク・フレディ(Frank Furedi)ケント大学 教授
ジェームズ E. ロジャース(James E. Rogers)シナジー 会長兼CEO
[ケース・ライター]
リー・ブキャナン(Leigh Buchanan)HBR シニア・エディター
*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。
政治に目覚めた人々
ジョアン・マンゴーは圧縮機のなかのごみになったような気分だった。デンバーの中央市民公園には大勢の人たちが押しかけ、そこはあまりにぎゅうぎゅう詰めで、もし気を失っても倒れる場所すらない。「これ以上暑くなったら、失神しちゃいますからね」とジョアンは心のなかでお天気の神様を脅迫した。
「何時かしら」。ジョアンは芝生の上でぴったり側にくっついている友人のマリアに尋ねた。「腕時計を見ることもできないわ」。それでも、体に感じるうっとうしさが興奮に水を差すことはなかった。
7月のある午後、ジョアンとカラリオン社の社員の半分は昼食を後回しにして、大統領候補を目指すジョン・ケリー上院議員の演説を聞きにやってきた。ジョアンにとっては、生まれて初めての政治的イベントで、彼女は34歳にして、やっと大人になったような不思議な高揚を感じていた。
彼女はつい最近まで、政治などはフットボールと同じで、気にしなければ気にならないものと考えていた。投票に出かけたこともなく、両親にそう言われてきたという理由だけで、自分は民主党の支持者であると何ら疑問を抱くことなく信じていた。父親はよく「悪魔が候補でも、民主党に投票するぞ」と言っていたものだった。実際、まさしく悪魔のような人が民主党候補になったこともあった。
このように政治に無関心だからといって、仕事のうえで困った経験など一度もない。ましてや、年商3000万ドル規模のマーケティング会社、カラリオンのデンバー・オフィスも政治とはとんと無縁だった。経営陣がそう意図したわけではない。就業規則にも政治に関する条項は記されていなかった。要するに、そのような必要などなかったのである。