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経営課題の複雑化と資本市場や社会からの要請の高度化により、企業には真のチーム経営が求められている。しかし、その実現のうえで障壁となっているのが、経営トップチームメンバーのサクセッションだ。この壁をどう乗り越えるべきか。経営幹部サクセッションに詳しい立教大学准教授の田中聡氏と、グローバルな組織コンサルティングファームであるコーン・フェリーの増田智史氏が、独自の調査結果をもとに指針を示す。
経営幹部サクセッションがうまくいかない構造的な理由
増田 田中先生のご著書『経営人材育成論:新規事業創出からミドルマネジャーはいかに学ぶか』には感銘を受けました。とりわけ、経営者は育成できるということを体系的に示されたのが印象に残っています。
田中 ありがとうございます。仕事柄、これまで多くの経営者と関わる中で、経営人材の育成に対する強い問題意識を抱くようになりました。というのも経営人材と管理職(マネジャー)では、その役割が本質的に異なるにもかかわらず、実際には管理職として活躍した人がそのまま経営人材として登用されるケースが一般的だからです。本来、管理職から経営人材へと移行する過程には、役割の変化に応じた育成機会が不可欠ですが、その支援が著しく不足しています。こうした問題意識を出発点に、これまで経営人材育成の研究を続けてきました。
増田 先見の明を感じます。というのも、このところ経営幹部のサクセッション(後継者計画)の相談が急増しているのです。
背景には、2015年のコーポレートガバナンス・コード策定があると見ています。従来、ブラックボックス化していたトップの後継者指名やCxOの選抜に、透明性のある手続きが求められるようになったからです。私たちコーン・フェリーとグロービスが2024年に発表した調査では、82%の企業が経営幹部サクセッションにすでに取り組んでいました。しかし、候補者リストの作成に留まっている企業が多く、取り組みをさらに強化したいと回答した企業は92%に上りました。
田中 興味深い結果です。コーポレートガバナンス・コードが導入されたことで、経営幹部サクセッションへの取り組みが形式的には広がっているものの、実態としてまだ多くの企業が本質的な課題を抱えているように思います。そこには大きく2つの構造的な問題があると考えています。一つは任期制の問題です。日本企業におけるCEOの任期は一般に4~6年程度で、これは世界的に見ても短いです。
増田 CEOやCxOが「上がり」のポジションになっている傾向はたしかにあるかもしれません。
田中 そうですね。任期が短いことで、任期満了まで大過なく務め上げることに意識が向かい、結果として、長期的な視点でリスクを伴う大胆な全社変革に踏み出しづらくなるといった問題点が挙げられます。