【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
フレッダ・カポール・クライン
(Freada Kapor Klein)クライン・アソシエーツ 社長
ミッチェル・カポール(Mitchell Kapor)アクセル・パートナーズ ゼネラル・パートナー
パトリック・カーンズ(Patrick Carnes)メドウズ 性的障害担当臨床ディレクター
バーク・スティントソン(Burke Stintson)AT&T PR担当ディレクター
ダリル・ケーン(Daryl Koehn)セント・トーマス大学 教授
リサ A. メイネロ(Lisa A. Mainairo)フェアフィールド大学 ビジネススクール 教授

[ケース・ライター]
スージー・ウェットラウファ
(Suzy Wetlaufer)元HBR編集長

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

また悪い癖が始まった

 ロジャー・クッシングは、だれよりも早くに出社することを日課としていた。早朝の静けさを利用して、目が回るような一日に備えておかなければならないからだ。事実、彼が勤めるグラマー・ア・ゴーゴーの一日はとにかく忙しい。

「大変とはいえ、それはよい意味での忙しさだ」。ロジャーはこう自分に言い聞かせる。同社は120番目の店舗を開店させたばかりで、あと15店舗を準備中である。

 グラマー・ア・ゴーゴーの常套手段、それはデパート向けにドラッグストア並みの価格で自社化粧品を販売することである。これが消費者から大いに受け入れられ、同社の〈ガール・パワー〉というナショナル・ブランドはいまや入手困難という売れ行きだ。売上げも利益もうなぎ登りなのは当然といえる。

 これに加えて、1年半以内にグローバル展開に乗り出すという積極策によって、いま以上に飛躍的な成長が見込まれていた。ロジャー自身、グラマー・ア・ゴーゴーのマーケティング部長として、この大きな飛躍の準備に深く関わっていた。

 そんなわけで、彼は毎朝6時半に出社し、静かな早朝をさまざまな書類や印刷物に目を通すことに費やした。ライバルの動向に目を光らせるのはもちろんのこと、ティーンエイジャーや20歳代を客層とする企業の幹部社員としては、最先端のポップ・カルチャーにも精通していなければならない。