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だれも組織構造や経営方針を尊敬したりしない
「尊敬に値する企業はどこか」。だれかにこう尋ねてみれば、たいていゼネラル・エレクトリック、スターバックス、ノードストローム、マイクロソフトといった名前が挙がるだろう。
では、その会社のヒエラルキーは何層あるのか、戦略をどのように決めているのかと尋ねてみても、正しく知っている人などまずいない。そもそも、知りたいとも思わないだろう。
これらの企業が尊敬される理由は、組織構造や経営方針ではなく、実はその能力にある。たとえば、イノベーションを生み出す能力であり、また移り変わる消費者のニーズに適応できる能力だ。
企業のこの種の能力──「組織能力」と呼ぼう──は無形資産のなかでも特に重要なものだ。これは目で見ることも、手で触ることもできないが、発行時価総額に天と地ほどの差を生じさせることさえある。
組織能力、つまり企業組織が有する集合的なスキルや手腕、専門知識の数々は、雇用、教育研修、報酬、コミュニケーションなど、人的投資の結果として育まれる。組織能力とは要するに、人材と各種の経営資源を組み合わせながら業務を遂行する方法そのものである。
組織能力は当該企業のアイデンティティあるいは個性であり、得意技を特定し、最終的には中核をなす。また概して、長期的に安定しており、資本調達、商品、技術などに比べて他社に模倣されにくい。
ただし組織能力は測定が難しいため、経営者はつい工場や設備といった有形資産に目を奪われがちだが、投資家が企業の収益力を信用するのは、このような組織能力の存在こそである。