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【HBR CASE STUDY】
[コメンテーター]
ロバート F. ブラナー(Robert F. Bruner)バージニア大学ダーデン経営大学院 特別教授
レダ・コスマイズ(Leda Cosmides)/ジョン・トゥービー(John Tooby)カリフォルニア大学サンタバーバラ校 センター・フォー・エボリューショナリー・サイコロジー 共同ディレクター
マイケル・パラニエリ(Michael Pragnell)シンジェンタ CEO
デイビッド・シュバイガー(David Schweiger)シュバイガー・アンド・アソシエーツ 社長
[ケース・ライター]
バイロン・レイマス(Byron Reimus)コンサルタント
*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。
会長の逆鱗に触れる
マイケル・ブライトンは横っ面をはたかれたような気持ちで、冷たい革椅子のなかで体を硬くした。ロンドンに拠点を置くロイヤル・ビスケットの会長、ジョン・キャラハン卿──彼は気分屋で有名である──は怒りの表情を露にして、書類を振り回しながら怒鳴った。
「このリーダー育成プログラムで君たち2人が協力したというしるしが何一つ見られないじゃないか」。会長がブライトンをにらみつける一方で、ドイツ人の協力者、ディーター・ウォーラックは無表情で会議室のテーブルを見つめている。
「何てことだ」。キャラハン卿は続ける。「プログラムをまとめるのに3カ月もあったんだぞ。これでは、人事部のプレゼンテーションのところどころを拾い出して、ごちゃ混ぜにしただけじゃないか」
キャラハン卿は書類をテーブルの上に叩きつけた。会議室のガラスのドアがカタカタと震えた。廊下を通りかかったロイヤル・ビスケットのマーケティング責任者、アントニー・マイルズの耳にも会議室のなかの荒れ模様が伝わってきた。マイルズは肩をすくめて足早に通り過ぎた。
一代で富を築いたキャラハン卿は愚か者が大嫌いである。彼が雷親父であるのは有名だったが、ブライトンがその標的となったのは、人事責任者としてキャラハン卿に仕えてきた5年間で今回が初めてだった。