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プログレッシブの強さの理由
オハイオ州メイフィールドビレッジに、プログレッシブ保険という自動車保険会社がある。1991年から2002年にかけて、同社の売上高は、およそ13億ドルから95億ドルへと成長した。わずか10年余りの間に、実に7倍を超える売上げ増を達成したのである。
その陰にはどのような粋な戦略があったのだろうか。業界そのものの成長率が高いのかと思いきや、けっしてそうではない。自動車保険は100年の歴史を誇る成熟産業で、成長率はGDPと大差ない。
では、プログレッシブは新規事業に参入したのかというと、これも違い、過去から現在に至るまで、一般のマイカー・オーナー向けの自動車保険に執拗なまでに特化している。また、グローバル化ともおよそ無縁で、事業地域はアメリカ国内に限定されている。
プログレッシブは事業を目覚ましく成長させたが、M&Aに打って出たわけでも、気の利いたマーケティング施策を展開したわけでもない。何年もの間、さしたる広告も打っておらず、マーケティング・キャンペーンに至っては、さんざんな結果に終わった例もあるほどだ。
さらに、新商品を矢継ぎ早に送り出したのでも──保険料を安めに設定した例はあるが──利益率を削って、売上げを増やしたのでもない。
プログレッシブの成功の秘密は「コンバインド・レシオ」にある。コンバインド・レシオとは、支払保険金額と事業費の合計額が保険料収入全体に占める比率を指し、保険会社の財務力を測る主要指標とされている。自動車保険会社の大多数は、このコンバインド・レシオが102%程度である。つまり、本業で2%の損失を出し、これを投資収益で穴埋めしているのだ。
ところがプログレッシブの場合、コンバインド・レシオは96%前後で推移している。群を抜く成長率でアメリカ自動車保険業界第3位にまで駆け上がったばかりか、収益性もきわめて良好だ。
プログレッシブの躍進の秘密は、他社よりもそつなく業務を遂行するという、いらだたしいまでに単純なものである。割安な保険料と手厚いサービスを売り物に、他社の契約者に乗り換えを促しただけなのだ。そしてこれを可能にしたものこそ、業務革新にほかならない。プログレッシブは画期的な業務手法を考案して、実地に取り入れたのである。