20年も続くDHLのサッカー大会

 DHLの共同CEOであるピーター・クルゼは、2003年、DHLユーロ杯サッカー選手権大会の数週間前に、同社のポルトガル代表チームに穏やかな調子ながら、こんなメッセージを発した。

 「ポルトガル代表のみなさんは、ここ最近、DHL主催の本大会で素晴らしい成績を何度も収めています。ですから、そろそろ他のチームに点を献上してあげてもよい頃ではないでしょうか」。彼は笑いながらこう言った。

 まだ余裕を残していた彼だったが、ある日の午後、サイドラインの側に立ち、母国ドイツの代表がポルトガルに完敗するのを見て、腕組みをし、そのまなざしは厳しいものに変わった。

 とはいえ上司のホーム・チームを負かすことは──たとえどのような影響が出ようとも──ポルトガル代表にすれば、何とも小気味のよいことに違いなかった。

 さて、だれだろうと不正行為を責められるのは歓迎できることではない。ポルトガル代表はDHLブリュッセル航空部門の代表チームを激戦の末に1対0で破ったが、相手チームのベルギー人監督がクレームをつけた。ポルトガル代表は、大会ルールで決められている以上の人数枠を超えて交替しており、これは猛暑にあっては有利に働いたというのである。

 ピーター・クルゼが──しぶしぶと言うのがふさわしくないならば、紳士的にとでも言おうか──ドイツを破ったポルトガルを祝福する一方、ブリュッセル航空部門の監督、ピーター・ケーズは、その後何カ月も、ポルトガルのルール違反が罰せられなかったことに腹を立てていた。

 ここで読者はふと疑問に思うことだろう。このような競技会が、仲間意識や連帯感といった精神的支柱を培ううえで、ふさわしいやり方なのだろうかと。国際的な運輸会社であるDHLの従業員の多くが、力をこめて「イエス」と答える。