個人戦から組織戦の時代へ

 アカウント・エグゼクティブ(顧客担当責任者)は、重要な顧客への売り込みと緊密な関係を樹立する責任を負っている。彼らは、同僚と交わしている会話で次のように語っている。

「フェニックス地区のマネジャーに電話をして、私が大切なお客様のために提案書を作成中だと話して、彼の担当地域についてはちょっと力を貸してほしいと頼んだんだ。しぶしぶながらもOKしてくれたんだが、それ以来、何の連絡もなければ、2度ほど電話をしたのに、返事もくれないんだよ」

 これに対して、フェニックスのマネジャーの言い分は「私には限られた時間と労力の範囲内で毎月達成しなければならない数値目標があるのです。他人の営業に手を貸したからといって私が認められるわけでもなければ、私の収入が増えるわけでもありません。ですから、そのようなことはしないようにしています」。

 次は、大手テレコミュニケーション会社の顧客担当バイス・プレジデントの発言である。

「当社は大手コングロマリットのゼンブラと年間300万ドルの取引を交わしていますが、この金額は将来の可能性を考えると、わずかなものでしかありません。ゼンブラの戦略部門はテレコミュニケーションで、彼らは過去10年間、膨大な投資を続けてきました。先週、同社のITシステムの責任者が私に、2つの地域の営業担当者について電話で苦情を訴えてきました。彼らはゼンブラの他部門に向けて値引きでサービスを売り込み、まんまと取引に成功したというのです。この苦情の主曰く『ゼンブラのネットワークを効率的に運用するには、全社的な戦略が必要であり、このように部分的に売り込みをされては混乱が生じる。安売りをされては、社内の摩擦の原因になる』。そしてこのようなスタンドプレーは、そっくりそのまま当社に跳ね返ってくるわけです」

 次の発言は、顧客の20%に総売上げの80%を依存しているという企業のセールス・レップによるものだ。彼女は大口顧客に機器を売り込んでおり、別の営業部門が担当している消耗品についてもこの顧客に納めている。

 彼女曰く「多くのお客様が機材と消耗品の購入を調整してほしいとご希望されていますが、それは生産プロセスに影響するからです。しかし通常、機材は消耗品に比べて値が張りますし、購入の頻度もけっして多くありません。ですから、先方のいろいろな部門の方々とコンタクトする必要があります。したがって、機材の売り込みには何度も何度もミーティングを持たなければなりませんし、時間もかなりかかります。さらに、納入した後にはあれこれアフターサービスも要求されます。私と消耗品担当の人たちが同じお客様を共有していようと、それぞれの目標は違っています。ですが、私としても彼らと相談する機会を持つことは心がけています」。

 あるセールス・マネジャーが最近開かれた年次営業会議について、次のようにコメントしている。

「会議は素晴らしいリゾート地で開かれました。食事はおいしく、天気も上々でした。営業兼マーケティング担当のシニア・バイス・プレジデントがチームワークに関してスピーチされました。ですが、それだけではまったくだめなのです。チームワークを日常業務に浸透させるには、いかに素晴らしいお話でも、所詮はリップ・サービス程度でしかないのです」