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人口動態の衝突
前号の特集「P. F. ドラッカー:マネジメントの源流」で明らかになったように、ドラッカーは1950年代の時点ですでに今日問題となっていることの多くを予見していた。たとえば、高齢化社会の到来を指摘し、それに備えるのがマネジメントの責務であると言及している。
そして、今回のインタビューにおいて、彼は「人口動態の衝突」という考えを披瀝している。それは先進諸国においても、また新興国においても初めての経験であり、いまだ答えの見えないチャレンジであるという。
では、このような大きなうねりのなかで、いったい何が求められるのか。そして、日本は何を強みとして新たな前進へと踏み出せばよいのか。前号に引き続き、インタビューの後編をお届けしたい。
DHBR(以下色文字):あなたは「人口動態の衝突」(clash of demo-graphics)について指摘されています。すなわち、高齢化が著しく進む日本やヨーロッパ、移民によってかろうじて高齢化の速度を抑えている北米圏やオセアニア、人口が微増する中国やインドといった新興国など、人口動態の異なる社会に衝突が生じるのだと。
ドラッカー(以下略):先進諸国に見られる「少子高齢化」という人口動態は未曾有の現象です。ローマ帝国以降、現在ほど出生率が低く、また高齢者が多い時代はありません。アメリカは先進諸国のなかでその進行が最も遅く、1936年に国民年金を導入した当時、平均寿命は40歳に届くかどうかといったところでした。たった60年前の話です。
我々はこのような事態の到来にまったく備えていませんでした。同じく若年人口の不足にも準備してきませんでした。
アメリカにおける少子高齢化の進行が遅いのは、やはり移民が多いからですか。
移民にまつわる問題は主要先進諸国で大きな課題となりつつあります。英語圏──アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、程度は異なりますがイギリスも──だけが移民に慣れており、どのように対処すればよいかをわかっています。しかし、日本、ロシア、またヨーロッパの多くの国々も、おそらくその対処に苦労するでしょう。
15年以内に、あらゆる先進諸国において若者の数が圧倒的に不足します。そしてそれが最初に起こるのが日本です。したがって、日本は人口の年齢構成に関する問題と移民に関する課題を同時に解決する策を考えなければなりません。